51: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/16(水) 19:28:51.92 ID:sFL9uHdg0
「……出番までの時間潰しといってはなんだけど、他愛のない戯言を聞いてもらっても構わないかな?」
飛鳥さんが言った。
「なんでしょう?」
「ボクは、夕美さんと志希、それぞれとふたり組のユニットを組んだことがある」
「……あっ、そういえば」
「やれやれ、気付いていなかったのか」
飛鳥さんが、ふっと息を漏らして首を横に振る。
「す、すみません」
「いや、ボクのほうこそ謝るべきだな。どうやら無用な勘繰りをしていたようだ」
「どういうことですか?」
「ようするに……ボクは審査に有利だと思われてるんじゃないか、とね」
「ああ……」
「しかし、ボクの知っている限りでは、あのふたりはそういった身びいきをする性格ではない。その点は安心してくれていいし、とらぬ狸のなんとやらだが、仮に審査の結果ボクが選ばれたとしても、そんなふうには思ってほしくない、ってところだね」
「はい、もちろんです」
「しかし、多少なりとも意識されているだろうと思っていたのは、いささか自意識過剰だったかな?」
「いえ……本当に忘れてただけです。プロデューサーさんも、飛鳥さんと蘭子さんがこのオーディションの本命だろうって言ってましたから」
「……へえ、それは光栄だね」
飛鳥さんがあごに手を添えて、なにか考え込むような仕草をする。
「其方も炯眼の賢者に見出されしワルキューレ、その魔力を軽んじるは愚者の行いよ」
蘭子さんが、託宣を告げる予言者のようにおごそかに言った。
「そうだな、ボクも同感だ」と飛鳥さん。
「……えっと?」
私が助けを求めるように視線を向けると、飛鳥さんは軽く肩をすくめた。
「お互いさま、だってさ」
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