42: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/10(木) 17:43:52.49 ID:xTncLF7m0
それから私は、周子さんに手伝ってもらって準備運動のストレッチをした。
「ん、ほたるちゃん意外と固いね。ちゃんと柔軟やんないとダメだよ、体柔らかいほうがケガしにくいから」
「す、すみません、がんばります」
周子さんが、「また謝ってる」と言ってけらけらと笑った。
周子さんはよく笑う。ある時は天真爛漫な子供のように、またある時はいじわるな狐のように。この笑顔は間違いなく、彼女の魅力のひとつだろう。
「……笑顔って、やっぱりだいじでしょうか」
ふと思い立って訊ねてみる。
「また唐突だね。笑顔?」
「はい、前にプロデューサーさんに笑ってみろと言われて……やってみたんですが、その……ヘタだったみたいで……」
「うーん、まあ必要不可欠ってわけでもないかな? クール系のイメージで売ってるアイドルもいるわけだし、そういう人は無表情でミステリアスなのが魅力だったりもするから」
なるほどミステリアス、と頭の中にメモを取る。
……クールでミステリアス、私にできるだろうか?
「――と、ここまでが一般論ね。あたし個人としては、とても大切だと思う」
「そうなんですか?」
「うん。あたしの知ってる、すごーく強いアイドルは、いつだって笑ってるから」
「強い?」
と私は繰り返した。
アイドルの評価として、それはあまりそぐわないように思ったからだ。
「うまく言えないんだけどねー。あの子は、すごいとか上手いじゃなくて、なんか『強い』って感じがする」
誰のことだろう?
周子さんは首をかしげる私を見て、小さく含み笑いを漏らした。
「あとほたるちゃんにも、その素質があるような気がする」
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