白菊ほたる『災いの子』
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40: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/10(木) 17:37:36.06 ID:xTncLF7m0
 周子さんがあごに手を当てて、ううんと小さくうなった。

「あたしはなんというかね、自分で言うのもなんだけど、要領がいいんだよ」

「要領、ですか?」

「そ、あたしがデビューしたあたりの時期に、たまたま世間の需要と合ってたみたいな感じかな。外見とか性格とかね。だからまあ、売れたのは実力じゃないよ。運がよかったんだね」

 そんなことはないだろう、と思った。
 周子さんはさまざまなお仕事をしていて、歌やダンスはもちろん、トークや演劇にいたるまで、どれをとってもレベルが高い。
 自由奔放であるにもかかわらず、どんな仕事もけろりとこなす天才肌と世間でも評判で、実力がないなんてことは、とても考えられない。

 困惑が表情に出ていたのか、周子さんは私の顔を見てくすりと笑った。

「あたしってもともと、なにやらせても他人よりうまくできるみたいなとこあったんだよね。昔から歌は上手いって言われてたし、運動神経もけっこうよかったし。だけどね、なんやかんやで人気出てきてぽんぽんお仕事貰えるようになってから、ふと周りを見渡してみるとね、みんなすごいんだこれが。これはあかん、あたし場違いすぎるって思ったね」

 そう言って、周子さんが肩をすくめる。私は黙って続きを待った。

「お仕事するたびに、今度こそボロがでるんじゃないかってびくびくしてたよ。『こいつ本当はたいしたことないな』ってね。だから、そうならないように、こうやってコソコソ練習したりして、一生懸命繕ってんの。その点について、あたしはいつも必死だよ」

「……でも私は、周子さんすごいって思います。本当に」

「うん、ありがと。まー、今はそんじょそこらのアイドルには負けてないってぐらいには自信もあるよ。でもそれは、こうやってあとから帳尻合わせをした、その成果だね」

「あ……すみません、なんか失礼なことを言って」

「いや、そーゆーキャラで売ってるわけだからね。そんなふうに思ってもらえてたなら、むしろうまくいってるってことだし、あたしとしちゃ万々歳だよ」

「やっぱり、誰でも一生懸命努力してるんですよね。私も、もっとがんばらないと……」

「んー……いや、誰でもってのはどうかなー」

「え?」

「あたしは違うけど、ホンモノの天才ってのはいるもんだよ」

 私は少し考えた。

「……一ノ瀬志希さん?」

「そーゆーこと」


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