29: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/07(月) 19:57:53.16 ID:eRaIODkj0
いやそれよりも、どうしよう? これいくらぐらいするんだろう? このぐらい大きい鏡だと、かなり高いはず……
「あ、言い忘れたことが――なんだこれ」
声に目を向けると、さっき出て行ったプロデューサーさんが戻ってきていた。
「ご、ごめんなさい! ちゃんと弁償しますから……」
「ケガは?」
「してません、触れてないですから」
「触れてない?」
プロデューサーさんがひび割れた鏡をしげしげと眺める。
「本当にケガはない?」
「はい」
「これは、なんで割れたんだ?」
「えっと、私の不幸によるものかと……」
笑顔の練習をしたら、なんて恥ずかしくて言えるわけがない。
「殴ったとか、なにか叩きつけたとかじゃないんだ?」
「そんなことしません」
「だったら弁償なんて必要ないよ。勝手に割れたってことだし。すぐ交換の手配しとくから問題ない」
「……でも、私のせいです」
「もしそうだとしても、直接打撃を加えてないなら責任はない。うちの事務所はカネだったらアホほどあるから気にしないでいい。むしろどんどん備品が壊れて新品になればみんなが喜ぶ」
無茶苦茶なことを言うなあ、と思った。怒られなくてよかったけど。
「その、言い忘れたことというのは?」
「そうそう、ここ使い終わったら帰る前にひと声かけてって。あと交換は明日になるから、今日のところはその鏡にはあまり近づかないように」
「わかりました」
202Res/248.44 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20