白菊ほたる『災いの子』
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30: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/07(月) 19:58:47.49 ID:eRaIODkj0
 再び部屋を出て行くプロデューサーさんを見送り、オーディオの再生ボタンを押す。
 トレーナーさんから指摘されたところを思い返し、流れる音楽に合わせてひとつひとつ反復していく。
 体中から汗が流れ、筋肉がきしみを上げる。苦しいけど、なんだか気持ちよかった。
 体を動かしているあいだはなにも考えずにいられて、嫌なことをぜんぶ忘れられるようだった。

 途中でいちど、「水分だけはしっかり取るように」というトレーナーさんの言葉を思い出して、レッスン室近くの自販機に向かった。
 500ミリリットル入りペットボトルのお水を2本買って、十円玉ひとつしか飲まれなかった。今日は運がいい。

 喉をうるおすと元気が出た。まだまだいくらでも踊れそうな気がした。
 運動はあまり得意なほうじゃない。きっと私には才能なんてないのだろう。わかっていても、つい同じようなミスを繰り返してしまう。

 でもだいじょうぶ。できないなら練習すればいいだけだから。

 失敗しなくなるまで。

 ちゃんとできるようになるまで。



 何度も何度も、何度でも。


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