白菊ほたる『災いの子』
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147: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 00:50:06.30 ID:sg2qAd8w0
 346が大手だから足元を見ている、という感じではなかった。
 そもそも全く移籍させる気がない。あるいは、万が一その条件で受けてくれれば儲けものといったところだろう。しかし、現状の白菊ほたるは事務所の金食い虫でしかないはずだ。なぜ、そこまで強気になれる?
 あきらめるべきだろうか。あの少女は偶然見かけただけに過ぎず、どうしても引き抜かなければならないという理由はない。それこそ、縁がなかったとでも思えばいいだけの話だ。

 休憩ラウンジにコーヒーを買いに行く。ちょうど顔見知りのプロデューサーがいたので、声をかけてみた。

「とある零細事務所に、13歳の売れないアイドルがいるとする」

「急になんの話です?」

「そこに、大手の事務所から『彼女をうちの事務所に移籍させないか』というオファーがくる」

「はあ……」

「零細事務所は、成立させる気がないとしか思えない金額を吹っ掛けた。オファーしてきた大手は当然、それでは無理だと言って話が終わる」

「ふむふむ」

「なぜ、こんなことをすると思う?」

「まともな額で成立させるより、手元に置いといた方がカネになると判断したからでしょう」

「どうやってカネにする?」

「キッズポルノ。見た目がよければですが」

「なるほど」

 あり得る話だ。ポルノとは言わないまでも、ポルノ一歩手前のような仕事は世にいくらでもある。一歩手前だから、違法ではないようなものが。ゆくゆくはその方面で売るために採用したという可能性は大いにある。
 少なくとも容姿は整っている。それに、薄幸そうな女というのは独特の色気があるものだ。弱冠13歳にして、すでに幸の薄さ日本代表のような風格を身にまとっている白菊ほたるは、その方面で人気が出てしまうかもしれない。

「ありがとう、参考になった」

「どういたしまして」

 自販機の横の長椅子に腰を下ろし、コーヒーをすすりながら思案する。

 なにが幸せかなんてわからない。
 あるいはそれもひとつの成功の形で、本人は満足するのかもしれない。
 そもそもこれは憶測にすぎない。向こうの事務所には、なにか別の思惑があるのかもしれない。

 それでも、邪魔をすると決めた。


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