122: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 18:43:29.64 ID:AfpWDvGb0
それから周子さんの提案で衣装のチェックをした。周子さんが言うには、こういった場合に使うはずの小物が足りなかったり、他の人のところに紛れ込んでいたりするのは珍しくないらしい。
幸いにも、今回はそういったアクシデントはないようだった。
「すみません、気が付きませんでした」
「なかなか謝りグセ抜けないねー」
私は、再び「すみません」と言ってしまいそうになって、なんとかこらえた。
だけど、言いかけたことまでお見通しだったらしく、周子さんがくすりと笑った。
「こーゆーときはすみませんじゃなくて、ありがとうって言うといいよ」
「……ありがとうございました」
「そうそう、どういたしましてだね」
しばらくのあいだ、いっしょにお茶を飲みながらお話をし、途中でいちど顔を出したプロデューサーさんが周子さんを見て何者かと困惑する場面もあったりして、時間はあっという間に過ぎていった。
周子さんはきっと、私が早めに現場入りして時間を持て余していることまで予測していたんだと思う。もしひとりで待っているだけだったら、時間の進みはこの何十倍にも遅く感じられただろう。
開場の時間が近づき、周子さんが「がんばってね」と言って控室を去っていく。
会場に入ったときの暗澹とした気分は、すっかり晴れていた。
だけど、やはりアクシデントはあった。
志希さんと夕美さんが到着しない。
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