120: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 18:40:55.06 ID:AfpWDvGb0
「ところで、志希ちゃんは迷惑かけてない?」と周子さんが言った。
志希さんは、その頭脳やアイドルとしての実力とは別に、奇行で有名なところがある。事務所でたびたび怪しい化学実験をして、問題を起こしているという噂も聞く。たぶん、その心配をしているんだろう。
「えっと、合同レッスンに来ないことはありましたけど、特に迷惑ということは……」
レッスン初日にセクハラっぽいことをされたような気がするけど、とりあえずそれは置いておこう。
「そらよかった。まあ夕美ちゃんがいるなら平気だろうとは思ってたけど」
「夕美さんがいると、平気なんですか?」
「志希ちゃんは夕美ちゃんになついてるからねー」
あのふたりはかなり仲がいいように見えるけど、『なついている』という表現は、志希さんのほうが夕美さんを特別視しているということだろうか。
少し考えて、そうであってもなにもおかしくはない、と思った。
「夕美さんは素晴らしい人ですから」
「あれ、ほたるちゃんまで夕美ちゃんにご執心なのかな? いいの? あれは寝る前にアイスだって食べちゃう女だよ」
「食べてもいいじゃないですか……」
周子さんがけらけらと笑う。
「夕美ちゃんっていい子なんだけど、別にいい子であろうとはしてないんだよね」
意味がよくわからず、私は首をひねった。
「どういうことです?」
「んー、ふつう『いい子』ってな、どこか無理してるところがあるんだよね。周りからいい子であることを期待されている、だからそうあるように努めている、みたいな。だから心の奥底では、けっこう鬱屈したものを抱えてる事が多かったりする。でも夕美ちゃんは違う。あの子、仕事現場でスタッフの手伝いとかよくしてるんだけどさ、あれは本当に本人が好きでやってるんだよ。根が善良だから、自分のやりたいようにやってたら結果的に他人のためにもなっているみたいな感じかな。ある意味では欲望に忠実ともいえるね。ああ見えて、ときどきキツいことも言うよ。素直だから」
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