白菊ほたる『災いの子』
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119: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 18:39:40.41 ID:AfpWDvGb0
「ああ、アレね。そいえば、うちの公式サイトの今日のライブ情報に、『天気予報にかかわらず傘の持参を推奨します』とか書いてあったの、あれほたるちゃんが言ったん?」

「え? あ、はい。私が関わると、天気が崩れやすいので……」

 それはたしかに私が進言したことだった。だけど、どうして今その話が出るんだろう。

「そかそか、ファインプレーだったね。外のファンたち、傘さしてフンから身を守ってるよ」

 なるほど、あれだけのカラスがいればフンを落とされる危険性は大いにある。見た目の不吉さに気を取られていて、考えもしなかった。

「実害になるようなのはそんぐらいだね。あんなん気にしないでええよ」

 私はうなだれて「はい」と答えたけど、自分でもわかるくらい、声には力がなかった。

 きゅぽんと妙な音がして顔を上げる。周子さんがお茶の缶の蓋を開けた音だった。

「あ、すみません。私がやります」

「いいからいいから、任しとき」

 立ち上がりかけた私を手で制し、周子さんが鼻歌混じりにお茶を淹れ始める。
 傾けた缶をゆすって急須にお茶っ葉を入れる。ポットのお湯をふたつの湯呑に注ぐ。それから湯呑を軽く揺らして、中のお湯を急須に移した。
 私はお茶の淹れ方に詳しくはないけど、正しい手順のようには見えない。周子さんの独自のやり方なのかもしれない。
 急須の蓋を閉じて少し待ってから、中身を何回かに分けて交互に湯呑に注ぐ。全て目分量だし、時間も計ってはいないようだけど、とても手際がよかった。

「ほい、これで帳消しね」

 そう言って、周子さんが湯呑を押し出してくる。
 なにが帳消しなんだろう、と思いながらそれを手に取り、私は目を見張った。茶柱が立っていた。
 さすがに偶然とは思えない。もしかしたらなにかコツみたいなものがあって、周子さんは狙ってこれを立てたのかもしれない。
 それでも、やっぱり嬉しかったし、少し気分が軽くなった。


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