118: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 18:38:29.19 ID:AfpWDvGb0
メイクさんもまだ来ていないだろうし、着替えるにしても、いくらなんでもまだ早い。
なにをしてようかな、と悩んでいるところに、コンコンとノックの音が届く。
「どうぞ」と答えると、大きいサングラスをかけた、長い黒髪の女性が入って来た。
てっきりプロデューサーさんだとばかり思っていた私は、びっくりして言葉を失った。
誰だろう? スタッフさんには見えないけど……
「お、やっぱりもう来てたんだ、早いねー」
どこか茶化すような、その声には覚えがあった。
「周子さん?」
「うん、ひさしぶりだね、ほたるちゃん」
周子さんがサングラスを外し、こちらに手を振る。
「その髪は……?」
「もちろんヅラだよん。ふだんはここまで気合いの入った変装はしないんだけどね、なかなか似合うっしょ」
「どうして、ここに?」
「関係者用の席ひとつ用意してもらえてね、今日は客席から見せてもらうんだ。でもさすがにこの日にあたしが堂々とうろついてるのはマズいから、こんな格好してるってわけ」
「お加減はよくなったんですか?」
「おかげさまで、風邪のほうは完治してるよ。ずっと寝てたから、カラダはだいぶなまってるだろうけどねー」
周子さんが私の向かい側に腰掛け、目の前にあった電気ポットの中をのぞき込む。
「むしろほたるちゃんがなんか元気ないねー。緊張してる?」
「いえ、その……空を見てしまって……」
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