27:名無しNIPPER
2018/04/24(火) 21:27:45.69 ID:25rQ95o00
くじ引きが当たった時、普通はどう思うのだろう。
運がよかったと思うのか、偶然だと思うのか。
私はどっちも思わない。当たるのは、当たり前の事だから。
羨ましいとよく言われる。それだけ運がいいなら、きっと色々楽だろうと。
その通りだ。困ったことに私は困ったことがほとんどない。
運動もできるし勉強も出来た。芸能界という特別な世界も、私にとっては特別でもなんでもなかった。特別であることは、私には当たり前だったから。
たくさんの人に願われて拝まれて、欲しいものはなんでも手に入って。
私が持っていないのは、平凡だけだった。
旅行に出かけた時に曇っているような平凡。
自販機で当たりをほとんど引いたことのないような平凡。
運が良すぎて、気味が悪いと言われない平凡。
彼女といると、私は平凡になれた。
出かけたときに降られる小雨や、赤信号によく引っかかることに小さな喜びを覚えた。
そしてくじ運も。
「見てください、茄子さん!」
ほたるちゃんはソファーで新聞とにらめっこしたまま、パタパタと私を手招く。その横顔は嬉しそうに輝いた。片手には、宝くじを持って。
「三千円です、三千円!」
「ホントですか?」
私は朝食の片づけをしているところだった。丁度今日が宝くじの発表の日だったようだ。
そんなこと、すっかり忘れていた。
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