33: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:40:22.37 ID:Q3vY7Opm0
「……え」
「お前がしゃんむっでん(どうしても)やりたかことは、ようわかった。俺に似てもっこすじゃ」
「そ、それじゃあ……」
34: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:41:08.27 ID:Q3vY7Opm0
「――」
体が震えるようでした。
35: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:41:43.81 ID:Q3vY7Opm0
震えはついに、はっきりそれとわかるほどになりました。
「嬉しいよ、私。認めてもらえて嬉しい。嬉しいんだけど……」
36: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:42:17.61 ID:Q3vY7Opm0
「本当の本当に、行くんだ……って。行っちゃうんだって」
「私がんばるって、できるもんってずっと思ってた、けど」
37: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:43:41.59 ID:Q3vY7Opm0
そんなこと、今まで誰にも言ったことがありませんでした。
身を投じる現実が、いかに広くて不透明か。
壁を越えた先にある「それ」の重さが、今思い出したように一気に体にのしかかってきたんです。
38: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:44:29.77 ID:Q3vY7Opm0
だから――
そう前置きし、お父さんは口の端をほんの少しだけ上げて。
同時に屋上を強い風が吹き抜けます。
39: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:45:17.93 ID:Q3vY7Opm0
その後、電話がありました。
お母さん婦人服なんて買ってなくて、代わりに地下の食品売り場でお高いお肉を買ってたんです。
不思議そうな顔でこっちを見ている子供たちに、私は急に恥ずかしくなってきました。
40: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:46:19.87 ID:Q3vY7Opm0
〇
出発は春の朝。始発の新幹線で私は東京に向かいます。
41: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:47:16.93 ID:Q3vY7Opm0
〇
お見送りは少数でした。
42: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:48:21.26 ID:Q3vY7Opm0
「美穂ーーーっ! がまだせ(頑張れ)ーーーーーーっ!!」
43: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:49:18.27 ID:Q3vY7Opm0
電車が加速します。
みんな、いっぱいの笑顔で手を振ってくれていました。
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