34:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/20(火) 01:11:26.47 ID:PoruoH2d0
「……ありがとう」
しばらくして、サーバルちゃんはぼくの方に目を向けて言い――またすぐに逸らす。
まだ本調子に戻ったとは言い難いが、顔つきはさっきと比べるとだいぶ良くなっていた。
ただ、その顔に浮かべる表情は……笑顔で取り繕うことすらも諦めた、衰弱しきった顔色だった。
「いいんだよ。ぼくはサーバルちゃんが良くなってくれれば、それで…………」
「うん…………」
「…………」
話すことが無くなると、またぼくたちは黙ってしまう。サーバルちゃんはあまり目を合わせようとしないし、ぼくは何も言い出せない。静寂を埋めるかのように、二人の間に風と水のせせらぎが通り抜ける。
ぼくはサーバルちゃんの横にぺたんと座って、彼女の髪をすっと撫でた。ぼくは苦しかった。サーバルちゃんが薄目になって気持ちよさそうな表情をするのが、唯一の救いだった。
こんなこと、今まで無かったのに。サーバルちゃんはいつも元気で、いつも笑顔で、いつもぼくを楽しませようとしてくれた。ぼくはそれにずっと支えられていたから、どんなに困難があっても乗り越えることができたのに。
今のサーバルちゃんは、まるで別人だ。
こんなに元気がなくて、疲れ果てて、弱った姿なんて、見たことがない。
ぼくは一体、どうすれば……
「カバン、チョットイイカナ」
しばらくして、腕に巻かれたラッキーさんが、ぼくに向かって話しかけてきた。二人きりで話したいと言われたので、ぼくはサーバルちゃんから少し離れた場所に移動した。
「今日ハココデ一泊シヨウカ」
「えっ…………」
口を開けるやいなやの提案に、ぼくは驚いた。
もともとラッキーさんには、いままでに出会ったフレンズさんと再び会うために、これまで旅をしたルートをもう一度回ると予め伝えていたし、今日だってその予定のスケジュール通りに動いていた。
こんな状況とはいえ、ラッキーさんの方から予定の変更を提案するなんて、ぼくは思ってもみなかったのだ。
「サーバルノ苦シミヲ和ラゲルタメダヨ。カバント二人キリデユックリ過ゴスノガ、今ノサーバル二トッテ、一番気持チガ落チ着クダロウカラネ」
「ラッキーさん……!」
どうやら、さっきぼくがバスの中で見つけて欲しいと言った「サーバルちゃんの苦しみを和らげる方法」を、ラッキーさんはずっと探し、自分なりの答えを見つけてくれたみたいだ。
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