33:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/20(火) 01:09:59.80 ID:PoruoH2d0
ばっと太陽の光が差し込み、それに伴って視界が開け、バスはなだらかな丘に差し掛かった。あちこちに咲いた草花と、遠くにそびえ立つ雄大な雪山の景色は、何の煩いも無い人間が見たとしら、息を飲んで見とれるに違いない。
……もっとも、今のぼくはその例外に当てはまるのだが。
バスを道沿いに走らせながら、ぼくは事故を起こさないよう注意しながら辺りを見回して、ビーバーさんたちが建てた、小さな木造の家が見当たらないか探した。
「……あっ、あれだ!」
森を抜けてからそう時間はかからず、ちょうど土地が低くなっている場所に、それなりに広い湖と、そのほとりに建つ家を発見した。
「あっ、かばんさんじゃないスか! お久しぶりっス!」
「ビーバーさん、助けてください! サーバルちゃんが……!」
「うええっ!? ど、どうしたっスか?」
事情をかいつまんで説明すると、ビーバーさんはぼくにサーバルちゃんが休めそうな木陰のある場所まで案内してくれた。ぼくはサーバルちゃんをバスからゆっくりと降ろし、落とさないよう慎重に運ぶ。
「サーバルちゃん大丈夫? ぼくの声、聞こえるかな?」
木の根元にそっと寝かせたサーバルちゃんに、ぼくは恐る恐る話しかけた。
「…………んん………………っ」
「……!」
「ぁ……かばん……ちゃん……?」
「サーバルちゃん……!」
「私………………あれ、ここは……?」
「サーバルちゃんはそこで休んでて。ぼくが水を持ってくるから」
ぼくはサーバルちゃんに代わって水辺へ向かい、両手になるべく多くの水を掬う。
それを彼女の口元まで持っていくと、少しずつ、ちろちろと舌を使って飲み始めた。
「ん……」
「そうそう、ゆっくりでいいからね……」
両手で作った器から水が無くなるまで与えたら、またぼくは水を掬いサーバルちゃんの目の前に持ってくる。
そんな行為を何回も、何回も繰り返した。実際は数回しかしてないはずなのに、ぼくにはそれが、とてつもなく長い時間に感じられた。
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