85:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:28:27.49 ID:kLIsZwOI0
駆けつけた2人の消防隊員が窓を割って入ると、部屋に女性が一人確認できた。
この家の主だろうか。傍に木材の下敷きになった猫がいる。
んん?と消防隊は駆けよった。
86:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:29:04.16 ID:kLIsZwOI0
「まだ、まだ生きろって言うんか。私はもう長くないのに、天寿を全うしろって言うんか、まぁず」
女性は猫に叫ぶように、縋るように声を絞り出していた。
消防隊員は腕を取った。女性は手をはらった。
「俺は消防隊員だ、お前みたいな被災者を見逃すわけにはいかねぇんだ」
「いや気を悪くしないでくれこの辺に生存者の反応があったのでね」
87:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:29:32.87 ID:kLIsZwOI0
BNKRGは何とか脱出することができた。
意識もはっきりしていない。
混濁している。
ふらついている。
ガクついている。
88:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:30:02.23 ID:kLIsZwOI0
だが満足だった。BNKRGはTISを止め、火災の崩落から、自殺から命を守ったのだ。
自己満足だろう。多くの猫を虐殺してきた罪は許される訳ではない。
でも、少しは贖罪になったのかもしれない。このまま、あの世でTISを待つのも悪くはない。
TIS……そういえば、MZと言ってたか。そして自分の名前は、まぁず。
MZ……あの日、避難した家で聞いた名前、電話番号。すべてが繋がった。
89:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:30:39.97 ID:kLIsZwOI0
声が聞こえる。
今となっては誰かすら思い出せない。
耳をすませる。
「さて、猫の気持ちが少しは分かったかな?」
90:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:31:27.65 ID:kLIsZwOI0
「どこへでも行くがいい。寒いから、服は適当に掛けておこう。優しさだよ」
「さて、帰ろうか。ボクらのお家が待っている」
声は遠ざかっていった。遥か前に聞いた、懐かしい声が聞こえた気がした。
91:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:31:55.16 ID:kLIsZwOI0
BNKRGは目を覚ますと「まだ死んでいなかったのか」と自分で自分が悲しくなった。
ふと、道路脇のカーブミラーを見るとそこには裸のBNKRGがいた。
92:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:32:40.80 ID:kLIsZwOI0
起きてすぐ、寒さに打ち震えた。服が布団のように掛けてあったのが幸いだった。
すぐに着た。また人間に戻れたのだ。
嬉しい――――という感情の前に寒さという生理現象がきていた。
TISの家に戻ろうか?だが家は焼け、まともな形を保ってはいないだろう。
93:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:33:12.75 ID:kLIsZwOI0
「あっめあっめふっれふっれかあさんがー」
寒い朝だ。
小学生(?)が歌う。それを見守るいつもの男は今日はいなかった。通学路は今日も平和でいい天気だ。
家につき、BNKRGがドアを開けようとした時、ドアが勝手に開いた。
KNNが家の中から開けたのだ。鉢合わせになった。
94:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:33:42.80 ID:kLIsZwOI0
「お母さ」
「バカ」
手が出ていた。
ビンタされたのだ。
95:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:34:14.55 ID:kLIsZwOI0
BNKRGはKNNを抱き返した。KNNは涙声になっていた。
ただいま、という声に気付いたのか、SNNNも玄関に顔を見せた。
笑顔だった。お姉ちゃんもただいま、と声をかけた。
BNKRGは過去の自分の罪を償い、自首する決意をした。
二度と、猫を殺さないことを誓った。
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