【艦これ】大井「顔、赤いですよ。大丈夫ですか」
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2:名無しNIPPER
2018/01/23(火) 00:53:54.76 ID:Nf6OgZl00
「大井」
提督が私の名前を呼ぶ。私のものではない、私の名前を。
3:名無しNIPPER
2018/01/23(火) 00:54:48.60 ID:Nf6OgZl00
私の言葉を受けて、提督は逡巡したように見えた。その逡巡を私に悟らせまいとしていたので、まず間違いない。
この人は変に艦娘を慮ってしまうところが昔からある。結局私たちは海軍という組織の――深海棲艦に向けて振り上げられ、そして振り下ろそうとされる鉄槌の、それを形作る細胞の一つにすぎないはずなのに。
私のそういった認識について、この人とぶつかったことは一度や二度ではない。私はこの人の初期艦だったから、最初は本当に、まったくもう円滑なコミュニケーションが図れなかった。
4:名無しNIPPER
2018/01/23(火) 00:55:25.62 ID:Nf6OgZl00
「神祇省に行く予定を立てておくか?」
神祇省は伊勢にある。ここ、横浜からだと小旅行だ。
艦娘の身分を笠に着て自由に外出ができるわけではなかった。それでも、神祇省が現在の日本において果たす役割は十二分に知られている。外出申請はほぼ十割通るだろう。
5:名無しNIPPER
2018/01/23(火) 00:58:16.79 ID:Nf6OgZl00
「……まぁ、お前は歴も長いしな。多少現場を離れてたくらいでどうにかなるとは思わんが、一応」
「長いというか」
6:名無しNIPPER
2018/01/23(火) 01:01:12.63 ID:Nf6OgZl00
「みんなは元気?」
「あぁ。北上とかから近況は聞いてないのか?」
7:名無しNIPPER
2018/01/23(火) 01:01:41.44 ID:Nf6OgZl00
「お仕事は?」
「おいおい、嫌なことを思いださせるなよ」
8:名無しNIPPER
2018/01/23(火) 01:03:23.36 ID:Nf6OgZl00
「軽空母どもが野毛に行きたいって言うから、連れてった。あと明石と大淀はヨドバシに行くっつってたな」
「野毛?」
9:名無しNIPPER
2018/01/23(火) 01:04:12.65 ID:Nf6OgZl00
「……ふぅん」
あの娘と趣味が合うとは、意外や意外、と言ったところだろうか。提督が瀟洒で洒脱なんてあまりにも……あまりにもすぎる。
いや、あるいは? もしかしたら?
10:名無しNIPPER
2018/01/23(火) 01:04:59.32 ID:Nf6OgZl00
それは果たして返答として正しかっただろうか。私が提督の顔を見ると、彼は不思議な顔をして視線を逸らした。理解してくれたのか、くれていないのか。
疑問は出てこなかった。ならば、拘泥する必要もないだろう。
「資材の管理は大丈夫? 艦娘の勤怠と健康については?」
11:名無しNIPPER
2018/01/23(火) 01:06:03.45 ID:Nf6OgZl00
「教員目指して、る、らしいぞ」
一瞬のよどみをわたしは聞き逃さなかった。「た」か「る」か。後者だったのは、提督なりの踏ん張った結果なのだと思う。
その努力と慮りに敬意を表し、私は気づかないふりをする。
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