鷹富士茄子「神様風邪を引きまして」
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42: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/01/21(日) 23:18:00.46 ID:VWwRAsjo0

「しかしながらー、少々困ったことになってしまっておりますー」

「扉は放たれ、眠りの夜気は外界へと解き放たれてしまいましてー」

「効かぬ者もおりましょうがー、多くの者達はー、なすすべもなく眠るばかりなりてー」


 淡々と語る芳乃ちゃんの言わんとするところを、私達はすぐに察しました。
 夜になってみんな大慌てで、それでもそれぞれの生活があって……。

 仮にこの風が街中に広がって、色んな人達が眠ってしまったとしたら……。

「と、とんでもないことになっちゃうじゃん……!」
「さようー。一刻も早くあの中に入り、茄子さんの風邪を治さねばなりませぬー」

 言って、芳乃ちゃんはすっくと立ち上がりました。
 いつの間にやらその手には、手折られてなお瑞々しい榊の枝が握られています。


「夜気はわたくしが留めまするゆえー、そなたらは、お早く玉子酒をお届けくださいませー」
「芳乃ちゃん……。わかった、急ぐね!」
「ぽこっ!」
「こんこん」

 芳乃ちゃんは鷹揚に微笑んで、一言、

「お頼み申しまする」

 不思議なことにその時だけ、語尾が伸びていませんでした。



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