43: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:13:17.49 ID:6rZ5mY140
アイデアが枯渇してしばらく無言になる。読み探り合い、睨み付け合いが胃を苦しくする。こいつ何隠しているんじゃないかって。俺を騙してどっかに行きそうで、怖いんだ。
すると六花が突如幕を切った。
六花「もう、この話終わりにしよう。苦しいだけ」
勇太「なんだと……。苦しくなんかあるか!頑張ってここまで来てるじゃんか!」
六花「でも、これ以上言ったら。これ以上言ったら……あぁ」
何か思い詰めているらしい。頭を抱えては俺の掛け声に反応しない。
話しかけようとしたが一向に俺と対話してはもらえない。
一方的にクイズをもらって、一方的に押しのけられる。内心俺で遊んでいるのかと疑惑が湧いてきた。
でもそれは最初に思った愛の定義に反している。六花は苦しんでいるんだ。苦しいから殴りたくなるんだ。彼女が苦しんでいるのに、何俺はのんきに不満をたらしているだよ!
勇太「六花。困ったことがあったら俺と話してもいいんだぞ!一人で悩むなんて言語道断だ!頼りにならないかもしれないけど愚痴なら聞きたい!」
その期待をへし折る如く、六花は首を横に振った。
六花「無理」
勇太「どうにもならないってダメだろ諦めちゃ!隠し事はなしなんだろ!俺に話せよ!」
六花「無理」
勇太「俺を信用できないのかよ!まさか誰かにいじめられたのか!?」
六花は首を横に振った。その勢いはあまりにも切ない。
仕方ない……。俺の呼吸が浅いことを今確認した。こんな狂犬みたいな顔、丹生谷だったら頬をはたかれるだろうな。がっつきすぎて逆に打ち明けたくないんだろう。俺だったらその気持ちになっている。
六花「もっと強い」
意外な声に驚いた。打ち明けてくれた。しかもヒントをくれて。でも分からない。質問の意図が相変わらず。
もっと強いってなんだよ。六花になにしたんだよ。
勇太「丹生谷のことか?」
六花「ううん」
勇太「凸守?十花さん?」
六花「あの方」
誰?あの方って誰だよ。落ち着け俺。あくまで六花を慰めるのが俺の目的だということを忘れるな。橋渡しだ。俺は六花の横にいられるだけでいいって過去の俺はそういったじゃんか。そうだな、六花の特別なことで敵わないといえば……六花について隠されたことを知らない、六花に一番よく接している、愛情あふれるクラスメイト。候補は、一人いた。
勇太「風鈴ちゃん?」
六花「違う」
即答だった。
六花「人間じゃない」
人間じゃないって誰……?ああ、六花の頭の世界のことだな。
勇太「不可視境界線の人達か?」
六花「……」
なぜ黙るんだよ。違うならまた違うって言うはずなのに。
勇太「正解なのか?」
六花「いや、うん……。いや、むしろずれてる。現実」
六花「でも……」
自分の口から教えないってことは何か理由があるはずと思いたい。
人間じゃない。人じゃない。もう候補ないじゃないか。無機物が六花に影響を与えるなんて、大切なものしかないだろう。
勇太「何か失くした?」
六花「うっ……」
ビンゴ。濁った川が少し奇麗になった感触を味わう。心の中で歓喜が湧いている。矢が的に命中したようだ。やっと。その反応は今までで初めてだった。進展に少し希望のドキドキ感が湧いてくる。
勇太「手伝おうか?」
六花「そうじゃない。実際のものじゃない」
六花「あと、ごめん……つらい……」
勇太「あ、ごめんな。少し休憩するな」
漆黒の無音の崖の横で立ったまま、六花と俺は互いに目を合わせられなくて、
無言のまま。
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