26: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:00:33.04 ID:6rZ5mY140
えっ……!?
衝撃が走る。地に弾けた一滴の涙に心が壊れる。
俺の呼吸は止まり、歓喜は死に、頭の流れも白色に凍結し、血脈の流れる妄想が頭の中に駆け巡る。
なんだよ。何が言いたいんだよ。
聞いてはいけないものを聞いている。明らかに。
生きた心地がしない。苦しくて吐きたい。
目の前の画面が揺れる。六花が2重に見える。動揺が隠し切れない。
心臓のドクドクする普段聞かない悪い音が全身に聞こえている。
耳をふさぎたい!六花を置いて逃げたい!怖い!
でも正解を言ったとしたらこの世が終わるような気がするんだ。
何を言ってほしいのか分からない。何を示しているのか分からない……!
お前は何を知っている!何を言ってほしい!!
聞くな!嫌だ!やめてくれ!!!
俺はただ六花の涙のぽろぽろ落ちていく涙を眺めるしかなかった。
見つめ合う中心を点に世界をカッターで引き裂さかれたような感じがする。
潤んだ瞳をすくって上げたくて、でも近づけなくて。
俺たちは一瞬で成り上がった虚無の世界をじっと静かに見ている。
分かっている。
おそらく回答を求めているのだろう。
事実と言えば事実だ。バッタはいない。この世界にはもう。
さっきの俺もそう言ったのだから、冷静じゃない今でもそうだと保証できる。
でも俺にはそんな資格はない。言う資格はゼロだ。
正当は必ずしも正当ではない。そんな回答を求めてないってそれは俺でも分かってる。
でも史実を覆られるわけでもない。これは現実だ。
勇気がでない。情けなくも口が震えるのみ。口の中で歯のガタガタする音がうるさい。
舌を切断できればよかったかと思うその逃げ腰な自分に自己嫌悪する。
俺にできることは。俺に託された回答は。
分からない。
勇太「すまん。答えられない」
俺が泣きたい思いで頭を下げると六花は激怒する様子もなく無返答だった。
暫く待つ。待つ。だが何もない。報酬なしと感じた俺は頭をあげると六花の口が待っていた。無表情に徹した顔で。しかし何かが死んだ感触で同時に怒っているとも取れる。
六花「ありがとう」
六花「これで分かった」
……。
なにが……?俺で何が分かるんだよ!?俺何も言ってないぞ!
嫌だ!嫌な予感がする!
勇太「なにが!!?」
荒い息をあげて唐突に強い質問をぶつける。
しかし彼女からのいい返事はもらえない。
絶壁を張るかのように、ここから先に行かせない。俺と六花を塞ぐ、強い意志。通称、怒り。
六花「行こう」
そう言って、自らこぼれた涙を拭いて、その潤った手で恐怖と絶望に消沈した俺の手を再度握ってくれる。俺の位置までゆっくりと来て、そしてエスコートしてくれた。意味が分からない。気味が悪い。そのヒントを探ろうとしても無表情だ。こんなに近くにいてその姿が恐ろしいと感じたことは今までない。何を理由にして?なにが?どうした?
俺と六花はただ歩いている。帰り道に沿って静かに握った手を少し揺らして。彼女を嫌に刺激させないためにも平静を装っているが今迄に遭遇したことのない理由に切迫している。それを思うと沈みかけている赤オレンジ色に放つ太陽が、エネルギーと希望と、そして抱擁の消滅を示した暗示に見えて、俺の未来予想図を彷彿とさせる。その欠けていく様が刑罰に一人残されていくようで寂しい。
いや気の持ちようだ。落ち着いて。六花はいなくなったわけじゃない。悩んでいる原因にはきっとなにが中心で埋まっていて、その何かを取り出せばめでたくハッピーエンドだ。世界の悪夢は終焉する。そうだ。終わるはず。終わっていいはず。ある、だから、する。六花と共にある揺れる足を見る。歩いていれば辛いけれどきっと家にたどり着く。説得できれば簡単なことだ。それで終わり!簡単なことじゃないか彼女一人を相手にして臆病すぎるぞ。簡単だ簡単……!でも……仮にそのハッピーエンドが俺にとっての本当の世界と相容れなかったとしたら。俺でも退治しきれない何かが阻んでいるとしたら。六花は幸せであってほしいけどその幸せを望むことは正しいのだろうか。そもそもこの六花は、今、楽しいか?
そう手を揺らして歩く。
だからせめて今だけでも幸せになってほしい。何かが起こる前の宴を思いっきり楽しめ。目の前を凛とさせた俺の強い意志が体を熱くする。
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