六花「勇太をなんとしてでも独占したい!」
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25: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:00:00.42 ID:6rZ5mY140
六花「……」
勇太「ん?何バカなこと言ってるんだよ。いつも楽しいに決まっているじゃんか」
六花「……」
勇太「……」
六花「……」
勇太「あの……。今日に限らずさ。いつも中二病で魔力を出して剣の格闘を挑んでは敵を倒してて、すごい力の持ち主だと思うぞ俺は。だが、邪王心眼よ。気を付けるがいい!いつかこっそり手に入れたい俺の野望心の目覚めに覚悟することだな!いつでも邪魔してきていいぞ!その度に肉付きの強化する設定が真の地獄を呼び覚ますだからな!……。やっぱ恥ずかしい!恥ずかしいと思ったし黒歴史になるなぁこれ!あ、周りにするのはやめてくれよ悶え死にそうだからさっはは。どうしたんだよ六花。帰る?」
はははっと誤魔化して大きく速く前進する。

すると、その手がふわりと、空中で離された。

六花……?
六花はまた下を向いて俯いている。元気をなくしたのが俺でも分かる。
六花と離された手に重力に振り回されて、地面に衝突するー!と目を大きくしたが渾身のつま先のディフェンス的硬さでケンケンをして飛び、威力の弱まる時を見計らって両足でジャンプ。音が大地に響く。危な。なんとかなったけど怖かった。となると急に怒りの矛先を与えたくなりその根幹の先を見る。
しかし思ったよりも期待外れで透かされた。六花は今度は何かを見ているように首が予想より少し違う気がしてならない。
どうした?とその位置から軽く声をかけてみるがそこから動くことはない。ただじっと六花は一人世界を創りその中を見つめている。俺は無視されている……!焦燥と不安が混じり切っていら立ちが芽生え始めていた。
俺はすぐ足を六花に向けてその場所まで威嚇するように大股ステップで駆け出し、下にある変なものを目撃する。なんだこれ?これは……バッタの死骸?
勇太「これ見てたの?」
うん、と返される。
アスファルトの上に浮く小さな緑。2センチもない小さな体が静かに死んでいる。全身がもう潰れていて動くことはない。体のエキスがアスファルトにまるで雨に濡れたときの濃い透明の色を出して周囲に溢れた跡がある。バッタの骨も車か自転車に轢かれたようで、草の間を魅力的な高いジャンプで重力を気にせず飛んでいく、その強靭な後ろ足が体の中心と共に1ミリ以下の厚さで平らになっている。触角から足まですべて。もうこの世界に用済みの死骸。ハエがたかってきたが六花の突いて回す足で追い返した。ただ静かにじっと時間を感知せずに居る存在。誰かが掃除するか、アリか他の動物のエサとして最後を全うするのだろう。
勇太「バッタ。死んじゃったね」
六花「……」
俯きが止まらない。何かしとしとした雨のような感じがする。
勇太「悲しいね。昨日まで生きてたのに最後は死んじゃった」
六花「……」
勇太「悲しい?」
六花「……」
勇太「……。はぁ。あのなあ、バッタ死んだのは仕方ないけど、これで悩んでも意味ないぞ。自然界は厳しいんだよ。生きる者は生きる。死んだ者は死ぬ。弱いものは強い者に食べられるシビアな世界なんだ。もうどうにもなんないよ。そんなに見つめても。六花のことお空でありがとうって見ているよ。行こう?」
俺は手を差し伸ばした。これで次のステージに行けるんだと。その陰には内心腹が立っていた。良くわからな過ぎて。得体の知れないものを触っている気がして。しかも他人事とは思えない雰囲気の何かを体は知っている。理解したくない何かを知ろうとしているんだと。
でも返ってこない。一向に体勢を変えないでずっと俯いたまま。俺に幸と手と顔の向くことはもうない。
六花……?その氷のように冷たくなった体に触れることができるのは、六花を良く知らない人だけだと体が畏怖した。なにかが、なにかが起ころうとしている……?
勇太「どうした?もう帰るか?」
六花「……」
見るのが嫌だった。なくなってほしいと体が自然に退く。


勇太「辛かったな。さあ帰ろう。お家に帰って温かいご飯食べよう?」

その言葉に、唐突に六花の顔が上がった。







六花「バッタさんはもう戻らないの……!」


左目から一滴の涙が、六花の訴えと共に落ちる。




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