六花「勇太をなんとしてでも独占したい!」
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24: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:59:13.10 ID:6rZ5mY140
第3話 「恋の時限爆弾(神はあなたを助けない)」

気が付いたら夕陽が差し掛かる。太陽の天下も下り坂。あれだけ青かった空も威厳をなくして、世界がオレンジと黄金に近い色に染まり光の届かない位置にはうっすら影を落としている。しかし空の色はまだ水色で、その金色と水色が混じったこの町は自家製ダイヤモンドのじっと見たくなる暖かい輝きを放っていた。鳥の群れも1,2羽電線に止まり、気象の変化に仲間を呼ぶ鳴き声もまばらに聞こえる。髪をなびかせる風も、六花に気に掛けるぐらい11月の冬らしい寒さで、風も少し強くなったと断言できる。バタバタいわせる俺たちの服の羽ばたきで勢いを感じた。棒立ちする六花のゴススカートも前より大きく風に流されていてうっとおしいのか細く白い手で抑えていた。この町の活気ももうすぐだ。オレンジ色の引導でできた道を見渡せば犬の散歩連れや走るランナーが昼間よりは多く見かけるようになったように思える。その生命の力を示す太陽に照らされて、六花の横顔は金色に見えて、特に可愛らしい高い鼻のてっぺんがオレンジ一点に反射していて、頬は暗く大人に映る。六花のその美しく輝く宝石をどんな存在よりも見ていたいと思った。それも永遠に。これが本番の告白前の最後の、六花とデートしたときの最後の姿だと思うと胸がキュって苦しくなる。でもこれでいいんだ。俺は前に進みたい。そう決心したんだ。
ふう。と気を込める。緊張で心臓の高鳴る音が止まらない。いよいよ本番で、今夜が最後。時間って思ったより早いもんだなといまさら悟る。だが振り返るほど後悔はない。
このデートもあと少しで終息を決める。そしてその決断者は俺だ。
じゃあ、今度は俺の番だ!
六花!と叫んで、ビクッさせてしまって後悔する。
勇太「言いたいことがある。ついてきてほしい」
俺は強く濃く言い放つ。かっこよさに惚れされたい。
真面目な取引。その男を示した声と真面目な表情に、六花は揺れた。肩の少しも動かさず静かに見つめたまま俺の瞳と深く共鳴し合う。彼女の目と眼帯から透けて見える金色のオッドアイは澄み渡るきれいさだった。硬直した体の中からその唇が開く。
六花「はいっ」
確かめ合うような真面目な表情のその言葉に内心ほころびが起こる。嬉しい。やった!それと同時に安堵で肩が脱力した。1つ呼吸が深くなる。しかし弱みを見せぬ自分の維持に気楽な言葉は相性が悪かった。言葉を受け取ると俺は顔の見えないように背を返しその真意を出した雰囲気を崩されないよう六花を護った。陰でガッツポーズを取る。第一段階は成功した。しかしまずはここからだと息を引き締める。俺の意気込んだ声に真面目な話だと理解してくれて何よりだ。心配な悩みの種は、もしや不要かもしれない。岩も砕けた気楽な思考に足も軽く前へと動き出す。一歩一歩勢いをつけて鈍い足が加速していく。それに連られて六花も横に来た。
勇太「今日は楽しかったか?」
六花「同意する。ローラーの演技も褒めてもらい、バトルも楽しいと感じた。すべり台で一緒に滑り、ブランコに乗り、ドームで一緒になって、弁当を食べて走ったり。全部楽しいかったゆうた。最高の一日だと思う」
無表情から繰り出されたその言葉に笑顔が止まらず心が躍った。同時に来てよかったと感謝したくなった。
勇太「そうか。よかったな」
嬉しい気持ちが抑えられず六花の頭を優しく愛情の伝わるように撫でる。六花は無表情であるが目の大きくなる様が感情を表していた。
もうすぐ日も暮れる。例の拠点へと移るべくそれが次の合図だ。震える緊張を隠し俺が笑って手を差し伸ばすと六花も出して、自分にはないほのかな温かみのある温度が体に伝わった。それのおかげで当初付き合い初めて手を繋いだことを思い出す。手の繋ぐ繋がないで真剣に悩んでいたあの頃と比べて今では六花も俺も成長しているだと気づく。その過去が幼いと感じ愛らしくなった。二人で繋いだ点をぶらんぶらんさせて二人で笑い合う。はは、楽しいな。まるで本物の彼女みたいに感じる。こんなこと言ったら他の人に笑われるかもしれないけど。俺には遠い異世界的現象にしかなくあり得ないと理解していた。TVの人の特権だと思ってた。でもこれが言葉でいう「彼女」なんだと思うと、ついに蒸気に等しかった夢を現に掴んで俺の存在が大きくなった気がする。
六花「ゆうたはどうだった?」
勇太「同じく俺も。きゃっきゃっ楽しんで笑って、怒って泣いてさ。思い出すだけで一杯、六花といると。記憶溢れすぎて何も話せなくなったよバカだな俺。あー……。おかしいよなはははっ。またウロボロスの輪っか作ってよ。あれで今度は王様ごっこやろうぜ。楽しいから。でも今度はより最高の奴で。……。ありがとな一緒にいてくれて」
満面の笑みになるかと思いきや意外にも、そう、と言った。六花も疲れて表情をセーブしているのだろう。六花的に言うと、新たな敵を討伐すべく養成中だろうな。今日色々走ったからな。だがそんな無表情の中でも声帯で不快ではない範囲であることが共鳴者ゆえに分かり、俺と同じ安堵に包まれた気持ちなんだと理解できた。そっか。嫌じゃないんだ。もっと喜ばせてあげたい。六花の人生の最高に残る思い出を作りに行こう。
勇太「それにしてもウロボロスとかどうやって覚えたんだ?形が面白かった。あ、そういえばお前の作ったやつ綺麗だったな。無駄がないというか。六花は編み物がすごく得意で巻き方も床を見るように整然としててすご」
六花「今日の私は楽しかった?」
えっ  ?
勇太「なに?」
六花「……」
勇太「……」


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