7: ◆cgcCmk1QIM[saga]
2018/01/04(木) 18:44:27.49 ID:R409ZOpN0
だけど、すぐに彼女の美点がそれだけではないと気が付きます。
「高森さん。あの……」
ある時レッスンを始める前、白菊さんは不意にわたしを呼び止めました。
靴ひもが切れ掛かっている、というのです。
私はそれに気が付いてもいませんでした。
いえ、履く時にもちろん一度チェックしていましたから、その後確認しようとも思っていなかったのです。
私が気づいた白菊さんの美点そのいちは、周囲にとても気を配っていること。
彼女はトラブルにとても敏感で、ともすれば当人よりもよく注意しています。
ある時なんか、固定金具が壊れて倒れ掛かってきた資料棚に誰より早く気付き、同期の子を助けたりしていました。
もしかしたら、私が助けてもらったような事は日常茶飯事なのかもしれません。
そして、私が気づいた白菊さんの美点、そのに。
「もう一度―――もう一度お願いします!」
皆がへたばりかかって、本人も汗びっしょりで、くたくたで。
それでもトレーナーさんの指導に喰らいついて行く白菊さん。
しばらくレッスンを共にしてすぐに気がつく彼女の美点は、その熱心さ、真剣さ。
白菊さんはとりたてて運動神経が良いわけでなく、飲み込みがいいというわけでもありません。だけどとても練習熱心で、何かにつまづいてもそこで挫ける、ということが無いのです。
練習熱心ということにかけてはきっと茜ちゃんといい勝負。
大人しく物静かなタイプなので見誤りがちですが、むしろ人一倍強く情熱を持っている子なのです。
トレーナーさんの言葉も一言も聞き漏らすまいとし、何度も何度も出来ないことに挑戦し、克服する。
その姿勢は、すこしのんびり屋の私自身、見習いたいと思うほどでした。
気配りができて、素直で、とても熱心。
あの一瞬の寂しそうな表情とは、結びつかないと思えるぐらいです。
だけど長くレッスンを共にするうちに、気がかりはむしろ増えていったのです。
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