4: ◆cgcCmk1QIM[saga]
2018/01/04(木) 18:42:02.66 ID:R409ZOpN0
いえ、正確には動かなかったんじゃなくて―――たぶん、私を突き飛ばしたあと、白菊さんはそこから逃げる時間がなかったのだと思います。 つまり、動けなかった。逃げ遅れたんです。
幸い『何か』……シーリングファンはすんでのところで白菊さんを逸れました。彼女は無事です。
だけど、それは『運良く』の話です。
なにが落ちてきたのか、どこに落ちるのか―――正確に見る余裕は、たぶん白菊さんにもありませんでした。
ただ、私たちの上に何かが落ちてくる、と漠然と察しただけでしょう。
それなのに白菊さんはためらい無く私を突き飛ばして、自分は逃げ遅れました。
そして、たった今自分の側で起きた出来事が、すこしも恐ろしくないみたいでした。
ぐしゃぐしゃになった残骸の側にたたずむ彼女はその瞬間、とても静かで、落ち着いるように見えて。
その彼女の表情が、私の中に焼き付いて離れなくなりました。
その表情の、なにかが変だと思ったのです。 似つかわしくないと思ったのです。 だって白菊さんはあのとき、とても、とても―――
―――寂しそうだったのです。
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