3: ◆cgcCmk1QIM[saga]
2018/01/04(木) 18:41:17.70 ID:R409ZOpN0
何の偶然か、乗っていたのは白菊さんただひとり。 とはいえさっきお話しした通り、まだお互い顔を知っているかどうか―――というぐらいでほとんど面識はありません。
二人で『おつれさまです』とか挨拶して二言、三言やりとりしたら、それで会話がもう続かなくて黙りこくっちゃって。
珍しく10階から1階までどこにも止まらなかったので、黙ったままあっという間に1階に到着です。
そのまま二人並んでエレベーターから吹き抜けになっている玄関ホールに出て、別々に歩きだそうとして―――そしたら、ふっと頭上が暗くなったんです。
あれっと思う暇も、見上げる暇もありませんでした。
だって次の瞬間、白菊さんが私を思い切り突き飛ばしたんです。
突き飛ばされたことにも気付かないほど、突然のことでした。私は驚きでまんまるになった目で白菊さんを見ながらたたらをふんで、エレベーター前からすこし離れたところでぺたん、と尻餅を付いてしまいました。
ついさっきまで自分が居たあたりに物凄い音を立てて『何か』が落ちて来たのは、そうして私が尻餅を付くのとほぼ同時ぐらいだったと思います。
―――私はその一瞬、自分を突き飛ばした姿勢のままでその場に立つ白菊さんにすっかり目を奪われていました。
白菊さんは、先ほど私たちが立っていたところから、一歩も動いていませんでした。
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