19: ◆cgcCmk1QIM[saga]
2018/01/04(木) 18:53:14.41 ID:R409ZOpN0
それまでの私なら、多分そう思ったところで止まっていたでしょう。
だって、できるわけがありません。
息を潜めるようにして暮らしても、結局誰かを苦しめるのに―――って。
でも、明日の夜死ぬのだとしたら、どうでしょう。
私はやってみようと決めました。
反対もされましたけど、きっとアイドルを諦めたまま死んだ『明日の夜の私』はとても後悔していると思ったんです。
挑戦はもちろん簡単じゃなくて、何度も何度も失敗して挫けそうになって―――だけど、挫けて諦めたその夜の自分が後悔すると知っていたから、挑戦を続けました。
……そして私は、このプロダクションに拾ってもらいました。
同期の友達もいて、夢を語り合って。
とてもとても楽しくて、夢みたいで―――
私はあのとき、もしかしたら不幸は自分から去ったのかも知れない、って思いました。
これからは幸せにやっていけるんじゃないかって―――
私たちのすぐそばで事故が起きたのは、そんな時でした。
それは、何かの宣言のように見えました。
お前の『不幸』は消えてなんていないんだぞ、と言う宣言です。
私は、みんなから距離をとることにしました。
同じゆめを見て、競い合う仲間を、もし巻き込んでしまったら、どれほど後悔するか知れないのです。
みんなは気にしないって、偶然だって言ってくれたけど―――そうじゃないって、私が一番知っていました。
だから、後悔しないようにしよう、と思ったんです。
私の不幸でに巻き込まれそうな人は、絶対に助けようって決めました。
明日やればいい、とは思えなくなりました。
今日やりきったんだって。
明日死ぬんだとしたら―――今日の私は全力でやったんだって、満足を抱いて今夜の眠りにつきたいって、そう思ったからです。
私が急ぐのは、だからです。
「高森さん、今度は高森さんが教えてください」
長い告白の後、白菊さんはまっすぐに私の目を見て、問いました。
「明日の夜高森さんが死ぬとしたら、高森さんは今日と明日をどう過ごしますか?」
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