16: ◆cgcCmk1QIM[saga]
2018/01/04(木) 18:50:03.84 ID:R409ZOpN0
「ああ―――もう、もう……!」
「た……高森さん?」
不意にわけのわからない嘆息を吐き出す私に、白菊さんは戸惑いを隠せないようでした。
そうですよね、わけが解らないですよね……!
「ごめんなさい白菊さん。 私いま自分の鈍さにちょっとあきれているところなんです……!」
「は、はあ……」
どう反応していいかわからない、という顔の白菊さんを尻目に、私は覚悟を決めました。
ぶっつけ本番。言葉がうまくまとまっていません。
でも、行ってしまおうと決めたんです。
「白菊さん―――私ね、A子さんと話したの」
びくっ、と白菊さんが身を硬くしました。
それはそうでしょう。
いかにも唐突ですし、私がA子さんから聞いた様々なことは、白菊さんにとってあまり触れられたくないところだったに違いありません。
だけど、言わなくてはいけませんでした。
「心配、してたよ」
「―――知ってます」
ひどく硬い言葉とともに、白菊さんの視線が揺らぎます。
そうです。知らないはずはありません。 感じてないはずがありません。
人を幸せにしたいと言う子が、自分かに向けられる心に気付かないはずはありません。
その上で彼女は、人から離れる道を選んだのです。
その理由は多分―――
「私も、心配なことがあるの」
「……私は、一人でいるべきなんです。皆と話したのなら、噂のことも、わかっていますよね……」
私の言葉を遮って、白菊さんが言います。
「ううん。聞きたいことはそれじゃないの。その上で、聞きたいの……白菊さんは何故、あれほどレッスンに打ち込むの? まるで―――明日が無いみたいに」
何か、白菊さんが言おうとしました。
私は、白菊さんかの瞳から目をそらしませんでした。
白菊さんは一度目を伏せて、沈黙して、再び瞳を上げて―――
「高森さんは―――今、自分が死んだと思ったことは、ありますか?」
とても静かな声で、そういいます。
白菊さんの、長い告白が始まりました。
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