11: ◆cgcCmk1QIM[saga]
2018/01/04(木) 18:46:49.88 ID:R409ZOpN0
「でも、あれはただの噂―――だよね?」
私は出来るだけ穏やかに言葉を継ぎました。
だけど、A子さんの表情は深刻そのもの。
「あたしもずっと、そう思っていたんです。 最初は白菊さんと、仲良くしていたし。 だけど―――ただの噂じゃないんじゃないか、って」
私から目をそらして言葉を続けるA子さん。
「高森さんも、事故にあったって聞きました。私も、です―――だれでもわかるじゃないですか。あんな事故、本当は滅多に起きないって」
A子さんの言うことは、解ります。
自分めがけて照明が落ちてきた―――なんて、私には初めての体験でした。
このプロダクションに所属して、短くない期間を活動してきて、あんな事故に遭ったのは初めてのこと。
靴紐が切れたりすることも、なかなかあることではありません。
だけど。
「だけど、貴女を事故から助けてくれたのも、白菊さんだよね? 私も、白菊さんが助けてくれなかったら、きっと大怪我をしていたと思う」
「もし、その事故が、白菊さんが居なければ起きなかったとしたら?」
A子さんは、真剣です。
「白菊さんと一緒に居るようになってから、いろんなことが起きるんです。 物が落ちてきたり、停電したり、すぐそばで交通事故が起こったり―――そして、そんな事が起きるたび、白菊さんは謝るんです。謝って、言うんです」
だんだん、A子さんの言葉が早口になっていきます。
私から顔をそむけて、硬い、震えるような言葉で、続けます。
「『私が不幸を呼んだから』―――って」
自分が不幸を呼ぶ。
誰かを不幸にする。
それが私なのだと―――白菊さんは言ったというのです。
「だから、避けたほうがいいんです。あの子のそばにいると、きっと高森さんもまた危ない目に遭います」
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