萩原雪歩「ココロをつたえる場所」
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3: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 20:52:03.47 ID:bbgcA4Fi0
 プロデューサーの言葉に従い、荷物やら上着やらといった支度を整えた四人は揃ってラジオの放送局を後にした。駐車場に停められた事務所の車の前に集まって、何をするでもなく時間をつぶしていたのだが。
 プロデューサーの到着は雪歩や千鶴に語った言葉とは裏腹に、たっぷり10分以上も後のことだった。

「悪い、話が長引いて遅くなった! それじゃあ、劇場に戻ろう」

以下略 AAS



4: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 20:54:02.16 ID:bbgcA4Fi0
「ようやく一息つけますわね。雪歩ちゃん、わたくしも後でお茶を頂いてもよろしくて?」

「はい、もちろんっ。……桃子ちゃんもお茶、飲む?」

「うーん……桃子は大丈夫。劇場に飲みかけのペットボトルが残ってるから、先にそっちを飲まないと」
以下略 AAS



5: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 20:54:39.20 ID:bbgcA4Fi0
 控え室に置いてある自前のお茶道具を引っ張り出し、銀色の袋から茶葉を適量すくって移していく。とりあえずまだ確かな地位を残しているはずの作業に手を付けながら、雪歩は三人の様子をちらりと窺ってみた。

「むむ、この空き時間でロコアートをコンプリートするのはシビアになりそう……うーん……」

 ロコはスケジュール表とにらめっこしながら何事かぶつぶつと呟いている。普段から難しいカタカナ語を多用する彼女には、なんだか凄いな、という漠然とした印象を抱いていた。実物を見たことはないけれど、アートについて語っているときの真剣そのものな表情は記憶に残っている。それもまた、雪歩のロコに対する印象を決定づける要素の一つだった。
以下略 AAS



6: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 20:55:23.92 ID:bbgcA4Fi0



 姿見の前に四人並んで、緩やかな音楽に合わせてステップを踏む。激しいダンスでは決してないから、振り入れにそこまで時間はかからなかった。しかし、当然ながらただ踊れればいいというものではない。

以下略 AAS



7: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 20:56:47.07 ID:bbgcA4Fi0
「とりあえず、言い出しっぺのロコからアイディアをプレゼンしますね。ロコは、何といってもアーティスティックにステージを彩りたいと思ってます!」

 ロコは自分の理想を、今度こそ自信に満ちた笑顔で宣言した。

「アイドルは歌って踊るもの。でも、それだけじゃないってロコは思います。ステージを、公演を、その全部をクリエイトしてこそアイドルです! そして、ロコがクリエイトするステージに、ロコアートは欠かせません!」
以下略 AAS



8: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 20:57:14.63 ID:bbgcA4Fi0
「えっと、桃子ちゃん……?」

「次、桃子の番だよね」

「え、ええ。そうなりますわね」
以下略 AAS



9: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 20:58:01.33 ID:bbgcA4Fi0



 交わした言葉は十分じゃなくて、それでも時間は流れていく。それを仕方のないことだと考える者もいれば、どうにかしたいと思う者もいた。
 そして、全員が自分なりの最善を尽くしながら、最初のレッスンからさらに二度レッスンが重ねられた。
以下略 AAS



10: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 20:59:58.74 ID:bbgcA4Fi0
「……! わたくし、コロちゃんを追いかけてきますわ!」

「……ぇ、あ、はいっ。お願いします」

 言い争いの間はあたふたして止めに入ることができず、いざロコが飛び出してしまっても、呆然として千鶴に任せることになってしまう。また何もできなかったな、と雪歩は口惜しさに手のひらをぎゅっと握った。
以下略 AAS



11: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 21:01:36.88 ID:bbgcA4Fi0
 劇場の廊下は部屋の中ほど暖房が強くないから、厚着とも言えないレッスン着だと少し肌寒い。小走りで控え室に向かう途中、遠くから千鶴がロコを呼ぶ声が聞こえた。
 もしかして、まだ見つかっていないのだろうか。手伝いに行こうかとも考えたけど、今更自分一人が加わったところであまり役には立てないだろうと思い直す。

 目当ての部屋にたどり着いて、最近出番が多くなってきたお茶道具を引っ張り出した。みんなが各々好きに持ち寄った道具を所狭しと収納した部屋の中で、よく使われるものはそこまで入り組んだところに行ってしまわない傾向にある。冬のお茶道具やコーヒーメーカーは、その代表例と言ってもいいだろう。
 お茶をいれることにしたのは、温かい飲み物があればもっと落ち着けるはず、なんて月並みな考えから。湯のみの数に少し迷ったけど、ちゃんと必要になりますように、とほんの小さな願掛けを込めて四人分のお茶を用意することにした。
以下略 AAS



12: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 21:02:31.72 ID:bbgcA4Fi0



「コンセプトはやっぱり悪くないはず。でもモチーフをプラスするとなるとアイディアがまだ足りないし、それに何より時間が……」

以下略 AAS



13: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 21:03:07.93 ID:bbgcA4Fi0
「ねえ、コロちゃん。ひとつ聞いてもいいかしら?」

「いいですよ、チヅル」

 ロコの悩みを吹き飛ばすために必要な質問がすぐに思い浮かぶことはなかった。だから、まずはずっと気になっていたことを率直に聞いてみることにする。
以下略 AAS



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