470: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2018/06/27(水) 23:27:06.89 ID:7h7NQTE30
「……確か大貫郵便局前に110mmを所持した部隊が居るはずよ。そっちにも伝令を派遣してもしまだ動けるようなら連れてきて、最悪装備だけでも確保を!
歩兵隊各班は私と共に敵への牽制・妨害射撃を行う人員と防火、負傷者救助に向かう人員に分かれて!特にシーサイドステーションは屋内部隊が全滅したとは考えがたいわ、一人でも多く救出しなさい!」
「「「了解!!」」」
東南アジアのスコールにも負けないような勢いで砲弾が飛んできている中で其方ばかり見ているわけにもいかず、視線を剥がして指示に戻る。周囲の隊員達も返答しつつすぐに散っていくが、空元気で無理矢理絞り出されたその声には明らかな焦燥と恐怖が滲み出ていた。
かくいう私も、脳裏には今し方目にした光景がしっかりと焼き付いている。
火の海。
我ながら、陳腐で使い古された表現だと思う。でも、アレを他にどう呼ぶべきか、私の語彙力では適切な表現を探すことは難しい。
大洗海岸通り、そして何より大洗鎮守府。この防衛線の命運を握る二つの重要拠点に、奴らの攻撃がとりわけ集中するのは考えてみれば自然なことだ。だけど、町そのものを完全に焼き払いかねない攻撃の中で更に念入りにリソースが割かれたその一帯は、見渡す限りの範囲が紅蓮の炎に飲み込まれまるでそこだけ昼間であるかのように照らし出されている。
無数の砲声に混じり、風に乗ってその方面からは奴らの悲鳴や呻き声も聞こえてきているため、両方かどちらか片方かは解らないがこの方面が完全に陥落したわけではないのだろう。
だけど、あの光景を見る限りそれは明らかに時間の問題だ。
そして私達にも、最早其方に気をかけられるほどの余裕は残されていない。
《こんのっ………照準ヨシ!撃て!!》
『グァッ……!? ォオオオオォオッ!!!』
まだ生き残っていたヒトマル2号車が、最後の一発となった主砲弾を放つ。軽巡ホ級の内一体が側面部分に直撃を受けて一瞬呻くが、急所を外したため効果は薄い。すぐに態勢を立て直したホ級は、背中の多段連装砲を2号車に向けながら今度は怒りの叫び声を上げた。
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