4: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:32:11.81 ID:eVTNZvKo0
部屋の鑑賞を続ける。本当にどれも面白いものばかりだ。しかし、まつりが未来に馬乗りになっているものだけは良くないのだろうか…… 後で未来は説教だな。
一つの絵を見つける。母親と父親に挟まれて嬉しそうにしている女の子の絵だ。プレゼントを貰って嬉しそうにしている。この絵を描いたのは、
「あ、こんな所で何してるのお兄ちゃん?」
5: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:33:09.58 ID:eVTNZvKo0
「へぇ〜 いい絵だね。誰が描いたんだろうね? 育とかかな?」
周防桃子を深く知らない人間なら見逃していた違和感だろう。しかし、俺はこれを見逃さず、そして確信に至った。この絵を描いたのは間違いなく桃子だ。99%の予想が100%の確信に昇華した。俺は気づいていないふりをする。
「そうだな。俺も全然分からないけど、みんなが集まった時に聞いてみるよ」
6: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:33:57.48 ID:eVTNZvKo0
それから程なくしてアイドルたちは全員集合しパーティは始まった。企画までしっかりと練られていてビンゴ大会や、プレゼント交換など楽しいものばかりだ。俺はというとこの日のために準備してきたプレゼントを皆に配っている。子供組はもちろんのこと、大人組には特に喜んで貰えたみたいでよかった。そして次は、桃子の番だ。
「メリークリスマス、桃子。俺からのクリスマスプレゼントだ」
「お兄ちゃん、みんなの分準備したんでしょ? 大変じゃなかった?」
7: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:35:24.54 ID:eVTNZvKo0
「あはははは! お兄ちゃん、サンタの格好全っ然にあってないね!」
「うぐっ…… まぁ分かってたけどさ……」
「これ見て似合ってるなんて言ってくれる人は誰もいないんじゃない?」
8: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:36:27.41 ID:eVTNZvKo0
「プロデューサーく〜ん! 終わったらいつものところ行くわよ〜!」
俺は分かりました、と告げるだけして送迎の準備に取り掛かる。音無さんや青羽さん、社長と協力して、家までの距離や年齢を考慮し、順番に車で送り届けていく。そして最後の一人となった
「悪いな、杏奈。最後になってしまって」
9: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:37:23.81 ID:eVTNZvKo0
「全く…… 杏奈よりも下の子でもプレゼントを貰ってない子はいるんだぞ?」
そう言うと杏奈は少し声音が上がった。
「それって…… 桃子ちゃんのこと……?」
10: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:38:11.80 ID:eVTNZvKo0
「プロデューサー……?」
「す、すまん。運転に集中しててな。それよりさっきの話、本当か?」
「うん…… 本人がそう言ってたし……」
11: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:39:02.88 ID:eVTNZvKo0
「……プロデューサー」
「ん? 何だ、杏奈?」
「杏奈、いくらクリスマスでも…… クマよりもウサギのぬいぐるみがいい…… だから、このプレゼント…… プロデューサーの、ガールフレンドとかに…… 渡せばいいと、思うよ……?」
12: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:39:56.06 ID:eVTNZvKo0
家族に杏奈を渡して俺は急いで劇場に戻る。本来、杏奈に渡すべきだったプレゼントは今もトランクに入ったままだ。時計を見れば11時を指している。あまり猶予はない。
劇場に戻ると既に音無さん以外の大人組が揃っていた。俺は息を切らせながら、口を開く。
「はぁはぁ…… すいません、みなさん! 少し、やらなくてはならないことができたので、 申し訳ありませんが、今日は帰らさせていただきます」
13: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:40:48.39 ID:eVTNZvKo0
「…… 何やら、訳アリのようだね? 真剣な眼差しをみて分かるよ。……プロデューサーの仕事はただアイドルに仕事を持ってくるだけでは務まらない。アイドル自身が楽しい、と思えるような、そんなプロデュースをしなくてはならないのだよ。くれぐれもアイドルを悲しませないでくれよ?」
「社長…… ありがとうございます!」
「君が来るのは一段落してからで全然構わないよ。その時は酒の肴になるようないい話を持って来てくれよ?」
14: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:41:23.53 ID:eVTNZvKo0
サンタさんはトナカイに乗って空からやってくる。
そんな幻想は私が女優を始めたその年に消えた。
私が女優を始めて以来、母親と父親の関係は急に悪くなった。それまでは家族でどこかに出かけたり、誕生日を祝ってもらったり、と仲の良い一家だったと思う。しかし、私の女優業が波に乗り出した頃、私の教育方針で両親は真っ二つに分かれ、そのまま妥協点を見いだせずに今に至っている。怒りの矛先が私に向くこともしばしばあり、その時は決まって口を閉じて黙っていることしかできない。当たり前の幸せが、突然失われる悲しさを知って、私は大人にならざるをえなかった。
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