15: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:41:53.47 ID:eVTNZvKo0
そして今年もクリスマスが来てしまった。世間が浮足立つのに対して、うちはいつも通り。しかし、今年は嬉しい出来事もあった。なんと劇場のみんなとクリスマスパーティができたのだ。私にはサンタは来ないけど、あんなに楽しかったんだからこれ以上望んだら欲張りだよね。そういえば、環と育にはちゃんとサンタが来たのだろうか。あの二人は私と違っていい子だから…… きっと今頃、枕の横にはプレゼントが置かれていることだろう。
サンタのことを考えているとふと思い出し、時計を見た。時刻は11時57分、ちょうどいい時間だ。そろそろ夢から現実に戻らなければ、周防桃子でなくなってしまう。私は自分への戒めとして部屋の窓から夜空を眺めた。
16: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:42:52.18 ID:eVTNZvKo0
3分後、日付が変わった。ずっと夜空を見ていたが何ら変化はなかった。はぁ…… やっぱり今年もサンタさんはいなかった。数年前から毎年行っている儀式のようなものだが、もう今年で潮時だろうか。1時1分になったらやめよう。そう決めて最後、窓の外に目を遣る。……時間だ。我慢していた寒さが急に強みを増した。もう寝よう、そう決めて振り向きかけた時、視界の隅で何か動いてるものを捉えた。
私は驚き、もう一度、窓の外を見た。夜空は依然と静かなままである。しかし、見間違えではなかった。それは道路をせっせと走って私の家へと向かって来た。遠目で暗くて良く見えないが、帽子を被って大きな袋を持っている。あれは…… サンタなのだろうか?
17: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:43:57.90 ID:eVTNZvKo0
私は興奮してそれに注目した。私の家に着いたと同時にインターホンを鳴らした。母親が出た。何やら話をしている。話が終わったのかそれは家の中に入った。足音が聞こえる。私の部屋へと向かってきている。私は慌てて布団に潜り込んで、寝たふりをした。
「桃子ちゃん、お邪魔しまーす」
声が聞こえる。きっとサンタだ。
18: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:44:52.24 ID:eVTNZvKo0
「うっ、え〜っと、そうだねぇ、あはははは、実は地図を失くしちゃってね。桃子ちゃんの家を忘れちゃったんだ〜 本当にごめんね?」
「もう! さみしかったんだからね! 本当に…… 今年は来てくれてよかったよ……」
「大丈夫! もうこれからは来年も再来年もぜ〜ったい、来るから安心しててね!」
19: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:45:54.00 ID:eVTNZvKo0
「……いつから気づいてたんだ」
「最初からだよ。こんな夜中にサンタの格好して走ってきて。そんな事する人、桃子、プロデューサーしか知らないよ」
「あ〜あ、やっぱり俺には演技の才能は無いな。何か、根本的にダメな気がする」
20: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:46:36.73 ID:eVTNZvKo0
「確かに、桃子の仕事の大部分は演技だ。でもお前の今の仕事は女優でも天才子役でもない。アイドルだ。だからお前を役者としては売り出さない。アイドルとして俺がプロデュースする」
「でも、だからといって昔と変わんないよ!」
「変わる!!!」
21: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:47:21.85 ID:eVTNZvKo0
「あぁ。それとも桃子は劇場のみんなを信用できないのか?」
「そんなことっ……! ……ないけど」
「だったら大丈夫だ。辛いときは俺や劇場のみんなを頼れ。一人で持てない荷物でもみんなで持てば軽くなるもんだ。だから……、辛さや悲しみは俺たちと分け合おう」
22: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:48:01.61 ID:eVTNZvKo0
涙が止まらない。まさかお兄ちゃんに泣かされる日がくるなんて。でも、胸のつかえは随分と軽くなった気がする。久しく触れてなかった人の温もりも十分に感じることができた。
「桃子、今すっごく幸せ」
「この程度で幸せになってもらっちゃ困るよ。桃子にはトップアイドルになってもらわなきゃだめなんだからな」
23: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:48:39.99 ID:eVTNZvKo0
24: ◆W56PhqhW.M
2017/12/25(月) 04:49:19.72 ID:eVTNZvKo0
終わりです。寝ます
25:名無しNIPPER[sage]
2017/12/25(月) 05:23:21.20 ID:rTTmvZdCO
小生意気だけどめちゃくちゃ可愛い先輩のおかげで今日もなんとか生き延びられそう。
>>1乙
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