【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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527:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:41:02.18 ID:7mW+iPec0

「そうだな。武道とは本来そういうものだ。いや、この国において、“道”とつくものはすべてそうかもしれない。身体の鍛練や技術の修練などは二の次、三の次だ。その本質は心の修行にある」

「心……」

「強さを求めるお前に、武道は必ずしも有効なものではない。強くなりたいのなら、体力をつけるために自主トレーニングに励むべきだと、私なら考える」

「…………」

 めぐみは黙ったまま考えた。郷田先生の言うことは正しいだろう。そして、もしも本当にフレンたちを守り、ロイヤリティを復活させるためには、それもまた必要なことなのだろうと思わされた。しかし。

「郷田先生。昨日私が見た、郷田先生の凄まじいまでの闘気、剣技、あれも自主トレーニングだけで身につくのですか?」

「……む」

 郷田先生はめぐみを見返した。今まであまり関心がなさそうだった郷田先生の目に、光が灯ったように見えた。

「無理だろうな」

「では、先生のおっしゃる心の修行も必要ということですね。なら、私は先生からその修行を受けたいです」

「…………」

 郷田先生は黙り込み、真っ直ぐにめぐみを見つめた。それはいつも通り、寡黙で厳めしい先生に他ならなかったけれど、めぐみには何かをためらい、迷っているように見えた。

「もしも私のお願いが先生のお仕事を逼迫するようであれば、無理は言いません。すっぱり諦めます。無理を言っていることは重々承知していますから」

「そんな気遣いは無用だ。私は出来もしないことを引き受けるつもりはない」

 郷田先生は頷いて、言った。

「剣道部の活動はほぼ毎日ある。放課後におまえに剣を教えることはできない」

「そうですか……」

 わかっていたことだ。郷田先生は多忙だ。めぐみのわがままに付き合うような時間はない。

「だが、朝ならば空いている」

「えっ……?」

 郷田先生は何でもないような顔をして言った。

「もしもお前が毎朝七時に学校に来るというのなら、私もお前の強くなりたいという気持ちが続く限り付き合おう」

「ほ、本当ですか!? でも、先生、お忙しいのでは……」

「朝は八時半から勤務時間だ。一時間ほどなら何の問題もない」

 まるで何でもないことのような口調だが、それはつまり、勤務時間外にめぐみに付き合ってくれるということだ。

「いや、さすがにそれは……」

「そもそも、お前の強くなりたいという想いを叶えることは私の仕事ではない。勤務時間内にしていいものではない」

「それは、まぁ……そうですけど」

「さっきまでの勢いはどうした? お前の強くなりたいという欲望はその程度なのか?」

「…………」

 めぐみは考える。この世界の命運を。フレンたちの今後を。そして、郷田先生の被る迷惑を。



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