【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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526:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:40:35.86 ID:7mW+iPec0

…………………………

 翌日放課後。めぐみは郷田先生に指示されたとおり、剣道場へ向かった。ゆうきとあきらは着いていくと言っていたが、めぐみはその申し出を丁重に断った。きっと、郷田先生は女子生徒が姦しくするのを好まない。郷田先生に本当に師事したいと考えるなら、自分ひとりで行くべきだと考えたからだ。ふたりはそんなめぐみの想いを聞き入れ、教室で待っていると言ってくれた。その気遣いは、めぐみにとって本当に嬉しいことだった。

 格技棟の中はフェンシング部や柔道部の声は聞こえてくるが、剣道場は静まり返っていた。

「失礼します」

 剣道場の戸は開いていた。めぐみは声だけかけて、中に入る。電灯はついているが、中はシンと静まり返り、めぐみはどこか暗い印象を憶えた。昨日、高等部の男子生徒たちがいたときは活気にあふれていたというのに、人がいなくなった道場というのは、こうも静謐な場所になるのかと、不思議な気持ちだった。

「……来たか」

 剣道場の奥、そんな静謐な場所に、郷田先生は正座で待っていた。

「こんにちは、郷田先生。今日はお時間を取っていただいて、ありがとうございます」

「ああ」

 郷田先生は短くそう答えると立ち上がった。

「最初に言っておくことがある。私は、剣道の専門家というわけではない」

「……?」

「昔、剣道ではない剣術を学んだことがある。それを見込まれ、高等部の生徒たちから剣道部の顧問をお願いされたのだ。だから、私を剣道の教員だと思っているなら筋違いだ」

 郷田先生の言葉は、めぐみにはどこまでも誠実に思えた。めぐみが郷田先生のことを勘違いしているなら、正さなければならないと思ったのだろう。

「それは、違います。私は、昨日の郷田先生の竹刀を振る姿を見て、先生に師事したいと思っただけですから」

「そうか。ならばよい」

 郷田先生は傍らに置いてあった何かの布を手に取り、めぐみに差し出した。

「女子用の剣道着だ。隣の更衣室でこれに着替えて来い」

「わかりました」

 めぐみは郷田先生から剣道着を受け取り、頷いた。めぐみが困らないようにだろう。剣道着の身に付け方を丁寧に描いた書類も一緒に渡された。めぐみは更衣室に向かい、書類とにらめっこしながら、剣道着を身につけた。郷田先生のようにピシリとはしていないが、何とか様にはなっているだろう。

「お待たせしました」

「ああ」

「ヘン、じゃないですかね?」

「剣道着の身に付け方にヘンも何もないだろう」

 郷田先生は興味なさそうに言うと、竹刀をめぐみに渡した。

「基本は教えてやる。とはいえ、私も指南書を読んで覚えた程度だがな」

 めぐみは郷田先生から、竹刀の握り方からひとつひとつ、丁寧に教わった。竹刀は予想より重く長く、めぐみはそれを素早く動かすことができるとはとても思えなかった。郷田先生はできる限りめぐみに分かりやすい言葉を選んでいるようだった。最低限の基本をめぐみに伝えた後、郷田先生は言った。

「その竹刀を振って、強くなれると思うか?」

 郷田先生の問いに、めぐみは少し考えてから、答えた。

「相当な鍛錬と修練が必要だと思います。気が遠くなるほど長く続ける必要があると感じました」



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