【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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528:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:41:32.67 ID:7mW+iPec0

「……わかりました。先生のお言葉に甘えます。毎朝七時、お願いします」

「ああ」

 めぐみが頭を下げ、郷田先生が頷いた、その瞬間だった。



「――やあ、まったく面白いものを見せてくれるものだ」



 瞬間、世界がモノクロに墜ちた。

 剣道場の入り口に人影が立っている。それはめぐみにとって、顔を合わせたいような人物ではない。冷たくどこまでもふざけるような笑みを浮かべるアンリミテッドの戦士、ダッシューだ。しかし、めぐみの隣には郷田先生がいる。めぐみは身を強ばらせるも、ロイヤルブレスを構えることはできない。

「……何者だ?」

 郷田先生がめぐみを庇うように立つ。対するダッシューはやはり、ふざけるような笑みを浮かべ、剣道場を歩く。

「ふぅん。なるほど。うん。まぁ、今はそう言うしかないよね」

 ダッシューは意味深そうにそう言う。

「いや、邪魔をしたのなら申し訳ない。剣道場というのは初めて入ったが、なかなか興味深いものが置いてあるものだね」

「……何を言っている」

「すぐにわかるさ」

 ダッシューが立ち止まり、剣道場の端の棚に手を伸ばす。そこには、展示用の防具一式が飾られていた。ダッシューはその防具を手に取ると、満足そうに笑った。

「凄まじい欲望だ。強くなりたいという、純粋な願い。これは良い素材になる」

 いけない、と瞬間的に判断した。ダッシューを止めなければならない。しかし、隣の郷田先生がそれを許してくれるとは思えない。郷田先生から見れば、ダッシューはただの不審者だろう。そんな彼に向かうことを、許してくれるはずがない。

「出でよ! ウバイトール!」

 果たして、闇の欲望が顕現する。モノクロに染まった世界で、その黒々としたヘドロのような何かは剣道の防具に取り付き、そして、生まれる。

『ウバイトォォォオオオオオオオオオル!!』

 闇が産声をあげるのを、めぐみは黙って見ていることしかできなかった。それは剣道の防具を身につけたウバイトールに見えた。否、実際には、防具そのものがウバイトールになったのだろう。巨大な小手は巨大な竹刀を握り、その全身からは禍々しい闘気があふれ出ているようだった。

「……なるほど」

 郷田先生は驚くでも取り乱すでもなく、淡々と目の前の事実を受け止めているようだった。

「大埜。私がアレを引きつけておく。その間に逃げろ」

「えっ……? いや、でも――」

「――でもも何もない。お前は生徒で、俺は教諭だ。是非もない」

 郷田先生の言わんとしていることは分かる。しかし、めぐみはプリキュアだ。闇の欲望を司るアンリミテッドを打ち倒す力がある。ただ、それを郷田先生に話すわけにはいかないことがもどかしい。

「……わかりました」

 めぐみは頷いて、走り出した。ダッシューが目を細め、言う。

「逃がすと思うかい?」

『ウバイトォォォオオオオオオオオオル!!』

 ウバイトールが凄まじい速度でめぐみに追いすがる。しかし、そのふたりの間に割って入る影があった。郷田先生だ。

「なっ……!?」

「ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 ドバン! と凄まじい音が鳴り響き、ウバイトールと郷田先生が激突する。郷田先生の振るう竹刀が、圧倒的な巨体を持つウバイトールの竹刀と拮抗する。

「す、すごい……」

 走りながら振り返り、その様を見る。めぐみはすぐに剣道場の出入り口までいたり、振り返る。

「郷田先生! 助けを呼んできます! 少しだけ待っていてください!」

 そしてめぐみは、フレンと仲間たちを呼ぶため、全速力で駆けた。



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