【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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491:名無しNIPPER[saga]
2018/04/22(日) 20:48:53.83 ID:TS+ShyS90

…………………………

 ノコギリ挽きについても、松永先生はやはり積極的に答えを言うようなことはなかった。ゆうきが何度も失敗して、自分で学んでいくのを待っているようだった。なかなかまっすぐに切断できないゆうきを、忍耐強く、辛抱強く、見守り続けてくれているように、ゆうきには思えた。やがて、ゆうきは松永先生に見守られたまま、端材をまっすぐに切り落とすことができるようになった。切断した端材はいくつに及んだだろうか。ゆうきの足下は切断するときに飛び散る木屑でいっぱいになっていた。

「……よし。よくがんばったな、王野。切り方のコツは、身体が覚えただろう」

「はい。力の入れ方とかが、わかったような気がします」

 へとへとのゆうきが答えると、松永先生は頷いた。

「それじゃあ、本番に行ってみよう。失敗したら、またけがきからだからな」

「……はい」

 ゆうきは本棚の材料――本番の材を万力に固定し、ノコギリを挽き始めた。ギコギコとリズミカルに、一定間隔で力を入れていく。ノコギリから出る木屑に惑わされずに、切断線を意識する。最後に切り落とすときは一番慎重に、ゆっくりと最後の部分が折れないように。そして、ゆうきはノコギリを挽き終えた。

「……よかった。仕上がり線はちゃんと残ってる」

 材はしかっかりと切断されていた。ゆうきはほっと胸をなで下ろし、次の材を万力に固定した。

 そんなことを数回繰り返して、ようやくすべての木材を切断し終えることができた。緊張の糸が切れ、どっと疲れが出てきたようだった。ゆうきはノコギリを作業机に置くと、ゆっくりと椅子に腰かけた。

「終わったぁ〜」

「……ああ。全部しっかりと切断できてるな。ほとんど切断線の通りだ」

 松永先生がすべての材を確認して、笑みを浮かべた。

「よくがんばったな、王野」

「……は、はい!」

 ゆうきは、自分がノコギリを挽いた材をもう一度確認した。何度見ても、自分がやったとは思えないくらい、きれいな仕上がりだ。

「不器用なわたしに、ここまでできるなんて、思ってませんでした」

「ああ、よくがんばったよ。王野はがんばり屋さんだな」

 松永先生はゆうきを手放しに褒めてくれた。

「王野はたしかに、少し手先が不器用かもしれないが、それでもここまでできたんだ。それは王野の努力の賜だ」

「そ、そんな……そこまで言われるほどのことじゃ……」

 ふと、すぐ隣に松永先生が座っていることを思い出す。手を伸ばせば、触れられる距離だ。そんな距離で、松永先生は、ドジな自分のことを、笑顔で褒めてくれている。

 あまり先生に褒められるようなこともない、自分を。

「はぅ……」

 ゆうきの頬が一気に赤みを帯びる。

(ど、どうしよう……わたし……)

 ゆうきは困惑と嬉しさがないまぜになったような気持ちで、思った。

(……わたし、ひょっとして、松永先生のこと、好きになっちゃったのかもしれない)



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