【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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名無しNIPPER
[saga]
2018/04/22(日) 20:48:25.73 ID:TS+ShyS90
…………………………
その少し前のこと。ゆうきが更衣室でジャージに着替えている頃、2年B組の教室では、HRが終わり、生徒たちは各自帰り支度や部活動の準備などにいそしんでいた。そんな中、窓際後ろに席を置く彼女は、ひとりきりで、ささっと帰り支度を終えていた。そのまま、カバンを持ち、席を立つ。と――、
「鈴蘭」
呼び止められる。声は、HRが終わった後、せわしなく教室から飛び出していったはじめだ。
「……なんで戻ってきたの?」
彼女は面倒くさそうに応じる。本当なら返事もしたくないような気分だが、それはどうしてもできなかった。はじめは鈴蘭の正面に回り込むと、言った。
「松永先生から聞いたよ。しっかり作品を完成させて、片付けと掃除もしてから帰ったんだってね。偉いよ、鈴蘭」
「……べつに。やりたくなくてもやれって言われるんだから、自分からやっただけよ」
彼女ははじめの顔も見ずに言った。
「もう帰りたいんだけど」
「もう少しだけ」
はじめはしかし、道を譲ろうとはしなかった。
「松永先生が、昨日、帰る直前に鈴蘭が急に元気をなくしたと言っていた。それが気になっていたんだ。今日も、あまり元気がないようだったしね」
「そんなのあたしの勝手でしょ。放っといてよ」
そう言い捨てる。それでもなお、はじめは言葉を続ける。
「それから、松永先生が、鈴蘭の作品はあと一回ニス塗りと磨きをすれば、本当にきれいな木工作品になるとおっしゃっていた。もしも今日、時間があるなら、やっていかないかい?」
「やるかやらないかもあたしの勝手よ。あんたに言われることじゃないわ」
彼女はそう言って、はじめの身体を押しのけて歩を進めた。
「しかし、もったいないとは思わないか? もう少しがんばるだけで、ひょっとしたら地区の展覧会の作品に選ばれるかもしれないんだ」
「あたしには関係ない。あたしは、あたしが欲しいものしか欲しくない」
彼女は自分について歩くはじめを、憎々しげに睨み付けた。
「なんであんたはあたしなんかに構うのよ。放っておいてよ」
「友達だからに決まっているだろう」
「……じゃあ、友達なんかじゃなくていいわよ。邪魔なのよ」
今度こそ、はじめの言葉は止まった。彼女について歩いていた足も止まった。けれど、ほんの一瞬だけ、彼女の足も、止まった。
「……あっ――」
「――そうか。そうだよね。すまない。お節介がすぎたかもしれない」
彼女は、自分が何を口走ろうとしていたのか、わからない。
ひょっとしたら、彼女の矜持に反するようなことを、口走ろうとしていたのかもしれない。
それは、誰にも分からない。
「じゃあ、また明日。鈴蘭」
「…………」
はじめは彼女の言葉を遮ってしまったことにすら気づかず、申し訳なさそうな顔をして、立ち去った。彼女は、昨日生まれたモヤモヤが、頭の中にどんどん広がっていくような気分だった。
「っ……」
ギリリと、噛みしめる奥歯から、血がにじむ。鉄さびのような味が口に広がる。
「あたし……っ」
答えは出ない。
彼女はいま、問いすら満足に描けないのだから。
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