102: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:23:46.92 ID:Qezuh/qr0
俺はその時、もう何も考えていなかった。
103: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:24:17.38 ID:Qezuh/qr0
美穂の手を掴み取り、抱き寄せる。
ギリギリで間に合った。
だが既に、俺の体を支えるものも何も無い。
104: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:24:49.83 ID:Qezuh/qr0
腕の中の美穂は気を失っているようだった。
こっちも遠くなりかけた意識を繋ぎとめる。
絶対に背中から落ちようと思った。
105: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:25:17.14 ID:Qezuh/qr0
――――プロデューサーさん?
106: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:25:45.88 ID:Qezuh/qr0
その時、横合いからものすごい突風が吹きました。
風は鋭く冷たくて、私達二人を更にもみくちゃにします。
107: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:26:30.51 ID:Qezuh/qr0
狸の「化学(ばけがく)」は、他者に己の姿を見誤らせ、脅かす技術の総称。
ある権威が言うには「身体の全組織組み替えの驚異」であり、ただの擬態とは一線を画す「変身」を実現する奇妙奇天烈の御業です。
究めれば狸から人になるにも、物になるにも他の動物になるにもまさに自由自在。
108: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:27:04.74 ID:Qezuh/qr0
だから卯月ちゃん、響子ちゃん。
どうか、私達に翼をください。
109: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:27:39.82 ID:Qezuh/qr0
蘭子「美穂ちゃ〜〜〜〜〜んっ!! プロデューサ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
父母「「ぽこーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」
110: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:28:42.87 ID:Qezuh/qr0
イヴ「あれ? けど変ですねぇ。SNS(サンタネットワーキングサービス)によると、今日の熊本上空は無風だったような〜」
楓「普通の風は全然ですね。だけど、『何もないところから急に起こる突風』というものがたま〜にあって――」グビグビ
111: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:29:18.34 ID:Qezuh/qr0
気が付けば、空を見上げていました。
化け狸のグライダーは風に乗り、鶴屋百貨店の屋上に軟着陸。
夢中で化けていた私は変化を解き、呆然とへたり込んでいます。
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