39: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:36:35.73 ID:TXSil8FD0
「シ、シキちゃん。今なんて……」
志希「キミの事を『つまんない』って言ったんだよ。聞こえなかったかな」
聞き間違いであって欲しかった。もしそうだったらどんなによかったことか。2回も同じことを言われたらアタシのあたまでも理解できる。
つまんない。その言葉を文字通り受け取ると面白くないってことだよね。
でもカナデちゃんがまとめ役で、ミカちゃんは真面目な頑張り屋さん。
シューコちゃんはマイペースでアタシがふざける係。それがいつものみんなの日常だよね。今、それがその通りに再現されていたはずだよ。
そこに『面白い』も『面白くもない』もないよね。ねぇシキちゃん。
「どうして」
志希「理由なんて言わなくても分かるんじゃないかなー?」
「なんで、前と変わらない日常じゃダメなの?」
志希「それ、本気で言ってる? だとしたら志希ちゃんちょーっとじゃないくらいガッカリだなー」
空間が、止まった。カナデちゃんとシュウコちゃんがおしゃべりしているはずなのに何も聞こえてこない。
口の中がざらざらしていて、背中からじっとりとした汗が吹き出しているのを感じる。
志希「キミは自分らしさを持っていると思ってたんだけどね。どうやらあたしの思い違いだったみたい」
はぁ、外の空気でも吸いに行こうかなあと立ち上がるシキちゃん。
……納得できない。
さっきカナデちゃんから受け取ったライブチケットが手のひらの中でくしゃりと握りつぶれる感触が伝わってきた。
「ちょっと待ってよ!」
ハイヒールをこつこつと鳴らしながらシキちゃんに歩み寄る。カナデちゃんとシューコちゃんがおしゃべりを止めたのがちらりと見えた。
「自分らしさってどういう事? ほら見て、アタシどこからどう見てもフレちゃんだよ!」
志希「……フレちゃんはさー」
シキちゃんは呟く。その瞳の先はアタシの方じゃなく、窓から見える青空を向いていた。
志希「笑顔の、天才なんだよね」
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