25: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/12/10(日) 07:37:53.70 ID:sgFcYz010
しかもその肉団子は生きている。どくどくと不気味に脈打ちつつ、
何かの形にならんと蠢きながらそこにあった。……春香が言う。
「なにを驚くことがある? この男は我の第一のしもべなのだ。闇の王の側近として、今まさに生まれ変わらんとしているのだぞ」
彼女の言葉に応えるが如く肉塊の表面がびちびちと音を立て蠢動する。
そうして春香と百合子の見つめる中、ソレは一つの形を作り出した。
「目をみはれ! これこそ我の描く野望に至る、その記念するべき第一歩!」
傍らの肉塊男に手をかざし、春香が満面の笑顔で言う。
百合子がその目をよく凝らし、恐る恐ると口にした。
「……み、見えない……です」
途端、室内の空気が凍りついた。
春香の顔から色が消え、無機質な調子で訊き返す。
「……なに? 百合子よ、お主今なんと言うた」
「だから、その、見えないんです。きゅ、急に頭から上が消えちゃいました。……多分、閣下の力のせいじゃないでしょうか」
「我の力?」
「ですから私にかけた、えぇっと、文字を見えなくする力?」
「……おお!」
春香が思い出したように手を打った。
そのおとぼけな反応に百合子の中の恐怖心もほんの僅かだが和らぐ。
そうして春香が両手を打ち鳴らすと――まるでそう、超能力者がお客の暗示を解くように――百合子の世界に文字が戻り、
同時に目の前の肉団子……もとい、プロデューサーの変化した頭部が視界の中に飛び込んで来たのである。
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