24: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/12/10(日) 07:36:22.59 ID:sgFcYz010
「遅い、待ちくたびれたわ」
空中にある見えない"何か"に肘を置き、頬杖をついた彼女が言う。
まるで嵐が通り過ぎた後のように荒れた室内は、つまりはそう言うことなのだろう。
"待ちくたびれた結果"なのだ。誰あらん目の前に座る春香――いや、春香の姿をした人智を越えた存在が。
瞬間、百合子は腰を抜かしてその場にへなへな座り込んだ。……ダメだ、おかしい、
この現実離れした状況に極々一般的な中学生でしかない自分の頭は追いつかない!!
常日頃から彼女がしている妄想物語にしても、
あくまで空想上のリアルだからこそ楽しめていたのだとこの時百合子は理解した。
その証拠に春香が右手を掲げると(そう、まるでスマホを操作するような軽やかさでだ)百合子の体が宙に浮いた。
「やった! 私空を飛んでる!!」などと長年抱いていた夢の一つが今、現実に叶った感激に浸るどころではない。
ガチガチと恐怖で歯を鳴らし、排尿したばかりだというのに
再び込み上げて来る粗相の予感に顔を赤らめた彼女に春香は言う。
「怯えておるのか? 愛い奴め」
「ひっ、ひぃぃ……!」
そして百合子は気がついた。くすくす笑う春香の隣に異形の存在がいることに。
「あっ、ああ!? まさか、そんな、なんてこと……!」
春香の悪の力により、空中でシーリングファンよろしくゆっくりと回転を続けながら百合子は絶望に満ちた呟きを吐く。
そう! 春香の隣に立つモノは、見慣れたスーツを着たその異形の人型の正体は!
「プロデューサーさん! ど、どうしちゃったんですかその頭は……?」
それはある種の仮装のようにも見えただろう。
もしくは映画の特殊メイクと言った方が的確な例えかもしれない。
今、慄く百合子の眼前で、かつてはプロデューサーだった者の首から上は
まるで粘土のような黄土色の肉塊に包み込まれていた。
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