9: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2017/12/02(土) 22:09:27.48 ID:vAzM7c8Y0
下級将校「さて、お嬢さん。こっちに来てもらおうかな」
妹「いや! お兄ちゃん、助けて……!」
将校は妹を無理やり引き立たせると、鎖を強く引っ張った。
(連れていかれる。妹が連れていかれてしまう。取り戻すべきではないのか)
(斬るな、将校を斬れば大事になる。自分も妹もただではすまない。斬ってはいけない。今は耐えろ)
激情と理性、二つの感情がせめぎ合う。短剣の柄を握りしめたまま、固まっていた。
魔女の言葉が渦巻く。この国は腐っている。王も貴族も軍も全てが腐敗に満ちている。
妹「お兄ちゃん! やめて! ううう、うあああああん!」
下級将校「うるさいガキだ、口を閉じろッ!」ゴスッ
殴られたらしい。
妹の泣き叫ぶ声が、兄を呼ぶ声が聞こえなくなった。
それだけで十分だった。
兄「おい……お前」
下級将校「ん? まだ文句あるのか貴さ」ブシュッ
地を蹴り、将校の右目に短剣を突き立てる。噴き出す赤黒い血。痛みに転げまわる将校。
ついにやってしまった。野次馬にも見られた。もうこれまでのような暮らしは送れないだろう。
だが、不思議と肩の荷が下りたような気がした。胸の内にわだかまっていた不満が、綺麗さっぱり洗い落とされていく。
兄「こっちだ! 魔法学校へ行くぞ!」
妹「お兄ちゃん!」
妹の手を取り、昼下がりの路地裏を駆け出す。
自分が本当に望んでいたこと。
兄(魔女、あんたの話に乗っかるぜ。たった一人の家族を守るために!)
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