10: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2017/12/02(土) 23:04:26.17 ID:vAzM7c8Y0
研究室の扉を蹴破った。普通に開ければ良かったのだが、興奮と焦りのあまり足が出てしまったのだ。
魔女は鏡に向かって、くせ毛を整えている最中だった。
魔女「肚が決まったみたいだね。曇りのない、晴れ渡った空のような目をしている」
兄「……魔女、俺は戦争で両親を失った。だから怖かったんだ。共に暮らしてきた妹まで、戦争で失ってしまうのが」
兄「ついさっき、妹が奴隷として売り飛ばされそうになった。しっかり税を納めていたのに、国はどんどん新たな税を課して締め付けてきやがる」
兄「やっと理解したんだよ。結局、人間は誰しも死ぬまで闘い続けなきゃならない。与えられる平穏など、あるわけない。闘って闘って、勝ち抜いたその先に初めて平穏と呼べるものがある」
兄「国のこととか、新しい政治とか俺には難しい話は分からねぇ。でも、一緒に闘わせてくれ。妹を守るために」
魔女が振り向いた。
口元にはあるかなしかの笑みを浮かべている。
魔女「妹さん」
妹「は、はい!」
魔女「キミは幸せ者だよ。勇敢なお兄さんを持てて」
妹「ありがとうございます! 魔女先生から褒めてもらえた……やったぁ!」
魔女「それはそうと、勇者君」
兄「勇者?」
魔女「そう、キミのことだよ。お兄さん。キミの勇気には感服した。ありがとう。正直、怖気づいて逃げ出すかと思っていた」
魔女「ちょっとこっちに来なさい。鏡で自分の瞳を見てみるんだ。ボクがキミを勇者と呼んだ理由が分かるから」
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