109: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/02/05(月) 16:42:44.63 ID:3Kbdwrqx0
―勇者の館・書斎―
勇者「どうしたんだよ、軍師。急に呼びつけるなんて」
暗闇の中に、軍師の顔がぼんやり浮かび上がった。
その表情はいつにも増して険しい。
卓の上にはバルフ近辺の地図が広げてあった。
無数の文字が書きこまれ、黒く潰れてしまっている箇所もある。
軍師「戦だ」
勇者「戦?」
軍師「間諜の情報でな。こちらが圧倒的に不利な条件で始まろうとしている」
勇者「圧倒的に不利……」
軍師「明朝、陽が昇らぬ内に全軍でここを進発する。兵には私の方から伝えておく」
勇者「おい、ちょっと待て! どういうことだ、そんな平然としていられるものなのかよ?」
軍師「平然ではなく、呆然としているだけだ」
軍師「お前は何があっても動じず、ヘラヘラ笑っていろ。怯えは他者に伝播する。民や兵を怯えさせてはならん。分かったな?」
勇者「軍師、俺には信じられない。今から戦争が始まるだなんて」
軍師「現実を受け入れろ」
軍師「血を流す覚悟を決めた。それゆえ勇者になった。私の主だった先代勇者も死に追いやった。違うか?」
勇者「それはそうだが……」
間諜の情報は真実だった。
アムダリヤ川を挟んで北に位置する都市・テルメズがバルフに向けておよそ1200の兵を出撃させたのだ。
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