54:名無しNIPPER[saga]
2017/11/26(日) 02:46:56.94 ID:9ajXHJzP0
◇◇◇
「馬鹿な……早すぎる」
呆然とした表情を浮かべて、ココは白い巨人の姿を見つめていた。
塗布されていた迷彩パターンがまるで垢の様に剥がれ落ち、その下から純白の装甲が姿を現している。
雪上に出てこなかった、残りひとりのASパイロット。警戒を怠っていたわけではない。だが、こんな劇的な登場は予想していなかった。
明らかにおかしい。雪崩れに巻き込まれたことによる損傷が見られないのもそうだが、なにより姿勢回復が早すぎる。
敵ASは既に膝立ちの状態だった。立ち上がり、その機動性を見せるのが容易な姿勢だ。
だがASの構造とマッスル・パッケージの出力から計算して、一瞬であの姿勢に戻ることは不可能の筈だ。
それこそ"不可視の何か"が機体を覆った雪を吹き飛ばしでもしない限りは。
『くそっ――』
「ルツ、やめろ、撃つな!」
インカム越しに指示を飛ばす。
雪上車には折り畳み式の対戦車ロケット砲が積んであり、敵がASの姿勢を回復させようとした場合はルツがそれを使って迎撃する計画だった。
だが、もはやそれは叶わない。敵がチェーンガンかテイザーで迎撃を試みる方が早いだろう。
こちらの札は、全てきり終えている。つまり――3度目の敗北だった。
『武器を捨てて投降しろ。いまなら命は助けてやる』
外部スピーカーから若い男の声で降伏勧告が響き渡る。それを聞いて、ココは、
(これが――これが、"そう"なのか?)
立ち上がる。目の前のASに視線を注ぎながら、その心には驚愕と――そして捜していた物が目の前に在るかもしれないという、僅かな喜びがあった。
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