53:名無しNIPPER[saga]
2017/11/26(日) 02:46:17.28 ID:9ajXHJzP0
◇◇◇
「取ったぜ」
雪上車の陰に隠れていたルツが呟き、躊躇わず引き金を引いた。
スコープにはバルメを抱きかかえ盾にしたアフリカ系の男が写っている。
(羨ましいね。その感触は、冥途の土産としては破格だろうさ)
レームやクルツに比べれば一歩劣るが、それでもルツは一流のスナイパーだ。
特に、相手が人質をとったこの状況では。僅かな緊張もない。彼にとっては、この状況を解決することこそが日常だったのだから。
銃口から吐き出された大口径弾は、僅かなずれもなく男の頭部を目指して突き進んだ。
この距離で外すことはない。1秒にも満たない短い時間で、男はバルメを傷つける暇もなくその意識を消失させる。永遠に。
だが――スコープに映る景色が、突如白く塗り潰された。
「なぁっ!?」
スコープから目を離す。そこで、ルツは状況がさらに変化したことを知った。
まるで砲撃でも受けたかのように、ターゲットとの間に巨大な雪の柱が立ちのぼる。
ルツの狙撃は、その雪柱に――いや、その中央に潜む者に阻まれ、力を失っていた。
重力に引かれ、巻き上げられた雪が地に落ちる。だが雪とは比べ物にならない、力強いシルエットが現れていた。
それは、これまでこの戦場に現れなかった者。雪の下に潜んでいた脅威性。
アーム・スレイブ。ARX-7<アーバレスト>の威容だった。
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