5:名無しNIPPER[saga]
2017/11/21(火) 19:59:38.06 ID:tuTmdYX90
喧騒をよそに、ココはヨナに連中の説明を続行した。
「こほん! 正義の傭兵部隊。連中は、武器を卸す相手がゲリラやテロリスト、それも結構な勢力を持つ相手の場合にのみ出張ってくる謎の武装集団だ。
調べた限りでは、どこの国に所属しているわけでもないらしく、全世界規模で活動をしているらしい。私の同業者にとっては頭痛の種さ」
「……武器商人を襲ってる?」
「というより、紛争の火種を摘み取っている。テロ屋に武器を流す武器商人たちや、凶悪なゲリラや海賊を壊滅させたりしてね」
「……本当にそんなのいるの?」
呟かれるヨナの疑問はもっともだ。要はココの言う通り【正義の味方】が現実世界に存在していることになる。
しかも国などによる合議制で運用されるものではなく、聞く限りでは私兵である。妄想、都市伝説。そう一蹴されるべき類の話だ。
「いるから困ってるんだよー。奴らのせいでどれだけ損をしたか……」
がっくりとオーバーアクションに肩を落としながらココ。フォローするようにレームが苦笑を浮かべて見せる。
「お嬢がヨナ君を担ごうとしてるわけじゃねえさ。実際、ここにいる面子は全員が一度以上、連中と相対してるわけだしな」
そして、その全員が戦うことを避けたがっているということは――
「……強い?」
『物凄く』
ヨナ以外の全員の声が唱和した。口々に敵の強さを保証する。
「レバノンの時は背筋が凍ったぜ……なんでM6相手にあんな接近されるまで気づかなかったんだか……」
「機甲部隊だけじゃありませんよ。その後に展開してきた歩兵部隊もよく鍛えこんでありました」
「お前らはまだいいだろ。ソッコー降伏してドンパチにはならなかったんだし……俺の時は警告なしにミサイルでコンテナをドーンだぞ?」
「トージョはあれよく生きてたよなー。連絡きた時には絶対死んだと思った」
しばらく彼らの苦労話を聞いて、ヨナはふと首をかしげた。皆は敵の強さ、恐ろしさを語っているが、そこに恨みが感じられない。つまり、
「強いって言う割には……誰も死んでないね?」
「そこが彼らが"正義の"傭兵集団である所以だ。必要以上に死人を出さない。降伏も受け入れて貰えたしね……
まあミサイルを撃ちこんできたのも事実だから、あくまで"出来る限り"だろうけど」
「次も死なないで済む保証はないってことだろ? 大丈夫かよお嬢」
ルツの疑問に、ココは胸を張ってこう答えた。
「負けた後のことを心配するより、勝つことを考えよう! あとこれ業務命令だから!」
ココが一度決めたことを撤回するなど、誰も本気で期待はしていなかったのだろう。うぇーい、と了解とうめき声の中間の様なものが各自から漏れる。
その緩い声の隙間から、ヨナは手を上げて質問の許可を求めた。
「何回負けたの?」
「何回かち合ったか、でなくて何回負けたか、ね――なんだい、ヨナ。私達がずっと負けっぱなしだと思ってるのかい?」
「……違うの?」
話を聞く限り、勝ったことがあるとは思えないのだが。
「フフーフ。では聞くがいい。我々と正義の傭兵部隊。都合3回ほど我々は標的にされ、そしてその戦績は――」
指を三本立ててから、その内の二本を逆側の手で包み隠すジェスチャー。悪戯っぽい顔で、ココは自分たちの戦果をヨナに伝えた。
「――2敗、1分けってところかな」
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