39:名無しNIPPER[saga]
2017/11/22(水) 23:13:02.92 ID:290cDT/E0
クルーゾーは残り二人からの射撃から身を隠しつつ、距離を詰めてくるソフィア・ベルマーと相対した。
アサルトライフルを構え、断続的にトリガーを引く。当たらない。木から木へ飛び移る様に身を翻すナイフ使いの挙動は恐るべきものだった。
断続的に拳銃で反撃してくる相手に対し、クルーゾーもその場から駆けだす。メリッサが挟撃に合わないよう、ベルマーへの牽制を続けながら。
ベルマーはそれに応じてきた。クルーゾーを追うように進路を変更する。いや、最初からそれが目的だったのか?
銃弾の応酬を繰り返しながら走り続け、クルーゾーは木立を抜けた。遅れてベルマーが拳銃を発砲しながら続く。
クルーゾーは雪原に身体を投げ出すように転がり、どうにかその一撃を避けた。外れた、といった方が正確かもしれない。
同時、相手の拳銃は弾倉が空になったらしい。スライドが下がりっぱなしになったそれを、ベルマーが振り払うように投げ捨てる。
(貰った!)
わざわざ盾に出来るものの多い木立を抜け出したのは、そうしなければこの女の距離に捕まると確信したからだ。
事前の資料で、敵がフィンランド軍の出だということは分かっている。敵は雪上での動き方を、こちらと同様に理解していた。
自分が先に木々の群れを出ることになるので、その時点で銃撃を受ける可能性はあったが、敵が手にしているのは小口径の自動拳銃。
AS操縦服には防弾機能がある。
仮に命中しても、頭に受けなければそうそう致命傷にはならないだろうという打算がクルーゾーにはあった。
既に小銃のセレクターはセミオートからフルオートへ切り替えてある。転がって膝立ちの姿勢に。
ストックを肩に押し付け、木立から抜けた敵に残り少ない弾丸を全てプレゼントする。
――が、敵の動きはこちらの想像をはるかに超えていた。
木立から飛び出してきた敵が、直角に進路を変更する。それまで慣性を無視するような有り得ざる機動に、照準が追いつかない。
だが、クルーゾーとて一流の兵士だ。発砲の反動を宥めすかし、銃口の向きを制御。敵の動きに追随させる。
しかし――当たらない。
ベルマーは短く何度も進路を切り返し、こちらの照準から身を躱してくる。
単に早いと言うだけではない。こちらの狙いの付け方が見透かされている。そんな有り得ざる妄想を抱きさえする足運び。
(どういう体捌きの技術だ!?)
あれほどまでに進路を切り返せば、慣性の打消しで動きが止まるか鈍る筈だというのに、敵にはそれが見られない。
何か特殊な歩法でも使っているのか、あるいは単純に、切り返す度、慣性を打ち消すほどに強く地面を蹴っているだけか。
どちらにせよ人間業とは思えない所業だ。そしてその怪物は、こちらの弾丸を全て避けきった。
反動が消える。クルーゾーの自動小銃は一番軽い状態にあった。つまり弾切れだ。
立ち上がりながらライフルを捨て、クルーゾーは腿のホルスターから拳銃を素早く引き抜く。だが同時、敵は格闘戦の間合いに踏み込んでいた。
敵の右足が閃く。足場の悪い雪上で放たれたとは思えない、鋭い鞭のような一撃がクルーゾーの右手にヒット。
拳銃が弾き飛ばされ、雪に埋まる。捜したところで回収は難しいだろう。
「くそっ――」
クルーゾーが悪態をつく、よりも早く。
敵は利き腕に持ち替えたナイフを、素早くこちらの急所に向けて突き出し――
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