15:名無しNIPPER[saga]
2017/11/21(火) 20:06:25.02 ID:tuTmdYX90
◇◇◇
雪山の道なき道を、雪上車が走っていく。
時刻は昼と夕刻の合間というところだったが、空には厚い雲がかかり、もはや見慣れ過ぎた降雪が始まっていた。
その下で、銀世界は輝きもせずにくすんだ白さを示している。
積雪は数メートル、酷いところでは5メートル以上もの厚みを誇っていた。
それでも車両が雪の"上"を進めるのは、無限軌道に加えて補助用のソリを車両の両脇に備え付け、接地圧を散らしているおかげである。
「……トージョさん、こういうの運転できるんすね」
助手席に座ったウゴがぽつりとつぶやく。
ウゴはメンバーの中では主にココの運転手を務めることが多い。
雪上車の運転経験もあったが、頂上までは長いので運転は交代で行うことにしたのだ。
現在、ハンドルを握っているのは自衛隊出身のトージョである。車内には二人だけ。他のメンバーは別ルートで頂上を目指している。
「日本ってのは、世界的に見ても結構な豪雪地帯でな。実は積雪の世界記録を持ってるのも日本なんだぜ」
慣れた手つきでギアを切り替えながら、トージョがへへんと胸を張る。
「俺も自衛隊に入ったばかりの頃はいろいろ回らされて、免許も結構取らされたしな。システム管理の仕事についてからは、割と落ち着いてたが……」
「お嬢のところに来てからは、毎日が退屈しませんから」
そこで、会話が途切れた。
あまり質の良い沈黙ではない。あー、と誤魔化すようにうめき声をトージョが上げ――すぐに観念したかのように、胸の内にあった疑念を口にした。
「"ラビットフット"の時のルツじゃないが……最近のココさん、変だと思わないか?」
「……この仕事のことですか?」
薄々同じことは考えていたようで、ウゴはすぐに話題を合わせてくる。
「ああ。連中を回避するために、すげえコストがかかってるだろ?」
こいつだって高かったろうしな、と、ハンドルを軽く叩く。改造を施された雪上車は、今回の仕事の為に調達されたものだった。
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