16:名無しNIPPER[saga]
2017/11/21(火) 20:06:52.45 ID:tuTmdYX90
「勝算はあるのかもしれないけどよ、そこまですることかね……?
ココさんのことは信頼してるが、どうしてこんなに拘るのかが分からんのよ」
「俺だって分かりませんよ。お嬢がなに考えてるかなんて……」
「ま、そりゃ俺達全員に言えることだけどな。
ココさんの頭の中を理解しているかどうかってことに関しちゃ、アネゴだって全部は理解してないだろ」
肩をすくめて、トージョはフロントガラスの向こう側を見やった。右前方に小高い丘が見える。
「この仕事が終わったら、またルツが何か言うかもな」
「無事に終わればいいですね……」
「まー、そこは大丈夫だろ。さっきも言ったが、その点ではココさんを信頼してるよ。
それに、ここまで来たら連中も出張ってこないかもしれないぜ?」
「雪山で待ち伏せしてるんじゃ? そりゃ、戦車なんかは入れられませんし、この天候じゃヘリだって飛べないでしょうけど。
レバノンの時みたいに、ASを使えば……」
ASという兵器の特性に、潜在的な脅威性というものがある。要は、ASはあらゆる地形に潜むことができる、というものだ。
走破性の高い二足歩行に、咄嗟に"掴む"という有用な動作ができるマニピュレータ。それがASを"どこにでもいる兵器"に昇華させた。
だがウゴの問いに、トージョは首を振って見せる。
「どうかな。確かにこの環境でまともに動けるのはASくらいのもんだが……ASだって、雪山が超得意ってわけじゃないんだぜ?
天敵がいないってだけで、むしろもっとも苦手な環境のひとつだ」
「ASにも詳しいんで?」
「そこそこな。色々免許取らされたって言ったろ? まあ、第一線で戦えるほどじゃないさ。
ともかくASは接地圧の関係で、ここまで深い積雪地帯じゃ本来の機動性の半分も発揮できない」
トージョは窓から見える雪原を指し示した。この雪の厚みだと、ASの下半身はほぼすっぽり雪に埋まってしまうだろう。
積雪地用のチューンナップを施しても、さほど意味がない深さだ。
「操縦兵の腕次第じゃ、落伍してお終いだ。対戦車装備があれば歩兵に撃破される可能性すら出てくる。定石なら、こんな深い雪山にASなんて……」
『よし、そこで止まれ。無駄な抵抗はするなよ』
「……あれ?」
「……AS、詳しいんじゃなかったんですか?」
「だから、そこそこだって。そこそこ」
かつてのレバノンの焼き直しの様に、4機の白いASに囲まれて。
トージョとウゴはすぐさま両手を上げることで、降伏の意を表明した。
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