男「元奴隷が居候する事になった」【安価有】
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117:名無しNIPPER[saga]
2017/11/14(火) 06:25:43.02 ID:OiSFZpw30


私は夢を見ない。

恐ろしい夜が早く過ぎ去りますようにと願いながら目を瞑り、そのまま気づけば朝になっている。

夢で起こる事柄はどれもひどいものばかりで、いっそ見なくなればいいと思ってから随分経った。

私はいつも夜に電源が落ちて、朝に電源が勝手に点く機械のようなものだ。

何某かの夢を見ているのかも知れないが、思い出すつもりもない。


ちゅんちゅん、と鳥の囀りがどこか遠くから聞こえてくる。

目蓋の重さをこじ開けるように見開き、朦朧とした意識が徐々に温まってきた。

掛け布団の重さに未だ違和感を覚えながらも、そのままむくり、と目が覚める。

時刻を見ると朝の六時四十分。

七時までに起きてくれば朝ごはんの準備をするよ、とはお兄さんの言伝。

ふかふかのベッドから身を起こして、先日購入してもらった部屋着に着替える。

部屋の出口にある姿見に映るのは、煤や垢まみれのみすぼらしい姿な自分ではなく、

きちんとした身なりで、まるで人並みの生活を過ごせているかのような私。

そのまま右の頬をむにゅ、と摘まんでみた。姿見の自分の滑稽な顔が見える。

そして少し力を入れてみると。

良かった、痛い。


私は夢を見ない。

ただ、今のこの現状は、まるで夢を見ているようで。

どうしようもなく胸がいっぱいになる。

 





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